Prince of Vampire 10

472 ページ11

# me








分娩台の上で、走馬灯のように、ここ数日のことを思い出す。






予定日より早いけど、そろそろ産まれるっていう身体の変化には自分でも気付いていて、周りにもそれを話していた。




顕嵐や家族は勿論だけど、
特に応援してくれたのが海斗で、


マタニティブルー的な鬱に私がなりかける度、いつも笑わせるような冗談を言って気持ちを明るくしてくれた。






travisのみんなも、顕嵐が辞めた理由をきちんと明かしたら、理解して前向きに励ましてくれた。




海人くんたちは子供の名前を考える！と張り切って考えてくれたみたいだけど、それがどうなったかは顕嵐の所で止まってて、分からない(笑)









…そんなことを考えていたら、痛みも少しずつ紛れてきた。






紛れたとしても、今までの人生史上一番の痛みであることには変わりなく、


一生分の生理痛が一度に来たような感覚。






それでも、


もう、頑張るしかないから。









…早く、この子に会いたい。






…顕嵐にこの子を抱かせてあげたい。






助産師さんに言われた通りに力んで、息をして、




もう、無理…ってなりそうになった頃、









「……おぎゃぁぁぁ、」






待ちに待った産声が、


分娩室の中に響いた。








…きっと、顕嵐のことだから報告を受ける前に一番に聞こえて、真っ先に立ち上がったんだろうなぁ。




ふ、と笑みが零れた。








「おめでとう、元気な女の子ですよ」






「…ありがとうございます」








取り上げられた小さな命を見て、


溢れそうな涙が、ピタッと止まった。






この子のため、世界で一番強い母親になりたい。






手に抱かせてもらった瞬間、
くしゃっとした皺の感覚に、


"命"の尊さを感じた。

473→←471

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す