Prince of Vampire 10

499 ページ38

「子供や孫たちを未来まで、見たいと思わないのか？


Aさんとも、永遠に生きていけるぞ」






「…でも、母さんはまだ人間のままだ。俺もAを吸血鬼にしようとは思わない」








「母さんは、母さんだ。


あの人は私の正体を知った上で、それでも一緒に連れ添ってくれた。


それだけでもう十分だ。


後は、母さんの好きにさせてあげたい」








「俺も元々は同じ気持ちだよ。


だけど、自然の摂理で生きたいと願う母さんと違って、Aは強い意思を持たない。


きっと俺と一緒なら"どちらでも良い"と言ってくれる。



だから余計に、Aが連れ添うと分かっていながら、自分だけの意思で永遠の命を手に入れる訳にはいかないんだ。


人間として生きてるAを、"俺と一緒"という理由だけで道連れにするなんて、俺には出来ない」






「……」






「Aが母さんのように、俺無しでも人間として生きたいと望むなら、父さんと同じ、AはAで人間のまま、俺だけ永遠に生きる道もあった。


でも、俺らはもう、二人で同じ将来を生きると決めたんだ。



だから俺も、Aと一緒に、時が来たら同じ墓に入りたい」








「……息子が自分を置いて墓に入ることを想像させられる程、辛いことはないな」








「…ごめん」






でも、それが俺の覚悟だから。






「きっと母さんと怜央よりは、それでも長生きするよ。




残念ながらAよりも。




斗愛よりは、早くあの世に生きたいな。
そしたら父さん、斗愛のこと見ててくれる？






…あ、宮近がいるか。


あいつはきっと、父さんと同じ、永遠の命を選ぶからね」








「……」








その後の無言の空間は、時が止まったよう。




まだ後何年も生きるというのに、
この一日を、きっと永遠の物に感じたいと、まるで父さんに魔法を掛けられたよう、俺の夜は中々明けなかった。

500→←498

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す