Prince of Vampire (ページ6)

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「…阿部くんは、たまにここにいるの？」

「うん。眠い時ここでさぼる。」

「そうなんだ、あったかそう。」

「冬は寒いだろうけどね。(笑)」

壁にいっそう寄りかかり、笑う。

綺麗な笑顔。

その時下から、

「おーい！顕嵐！！」

その声と共に

ヒュッ…

勢いよく、何かが
飛んでくる。

ボールだ、

ぶつかる！

その瞬間、

「っ！あぶな！」

っ、！？

阿部くんのスラッとした長身が目の前を覆う。

あんなにもたれかかっていたのに、

いつの間にか

立ち上がっていて、

前にいて、

「間一髪。」

阿部くんはそう言うけれど。

阿部くんの動きは、かなり余裕があるように、一瞬の出来事で感じた。

目の前でボールをキャッチした阿部くんは、

指3本を器用に後方に向けると、下にいた親友にノールックのまま投げ返した。

「大丈夫だった？」

「うん…。私は、全然。」

「なら、よかった。」

阿部くんは静かに微笑んだ。

「…ありがとう。」

「いや、怖かったっしょ。
悪いな。
あいつらには言っとく。」

「ううん。

…凄いキャッチ。」

「あ、、一応野球やってたから。」

「そうなんだ。知らなかった。」

…野球やってたのレベルにしても、凄いよ、、？

「うん。あまり話したことなかったよな。」

「確かに、こんなに席も近いし、宮近くんとよく三人でいるのにね。」

心拍数は、上がったまま、冷静を装って答えた。

「ほんとだな。」

阿部くんは、さっき以上に顔をくしゃっとさせ、

「あいつだけじゃなくて
俺とも仲良くしてよ。」

また私の目をじーっと見た。

それがすごく男らしい表情で。

ドキッ

胸が今までで一番高鳴ったこと、
その場では言わなかった。

目の前にいる阿部くんにも、
下の方で立って私たちをずっと見つめていた宮近くんにも。