Prince of Vampire (ページ31)

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「…顕嵐？」

見渡しながら、一人呟く。

元いた所に、顕嵐はいなかった。
そりゃそうか、場所、動いてるよね。

小走りで、探す。

通路のど真ん中だと動きにくいから、端に寄って。

石段があって、歩きにくい。

…あ、そっか。

夕実に言われたことを思い出し、
スマホを取り出す。

電話したら早いよね。

画面を開き、通話履歴の上の方にいる、
顕嵐の番号に触れ、耳に当てる。

「…もしもし、」

すぐ出てくれる。

「顕嵐、今、どこ？」

「あ、探してた？
じゃ俺二人んとこ、行くわ。」

「ううん、私一人で、今行こうと思うんだけど。」

「A、一人なの？
…そっか、じゃあ俺が行く。どこ？」

「よく分かんない石段の上のあたり。」

「え、どこだそれ(笑)。

でも、なんとか見つけるわ。」

そう言うと、通話が切れた。

石段なんて、たくさんあるから分からないよね、
ほんとに見つけられるかな、と思いつつ、とりあえず、待つことに。

あ、花火。
ここ、見やすい。

穴場を見つけた感覚で、

もう少し上の方へと登った。

「あっ、」

グラッ

ついよろけそうになる、

瞬間。

「あぶな、」

腕を掴まれる。

「…顕嵐、」

こんな早く来てくれるなんて。

「あんま危なっかしいことしないで。

宮近といるから大丈夫だと思ったのに。」

「…ごめん。」

でも、来てくれた。

「見つけてくれるの、早いね。」

「石段、ここしか無かった。
それに、その飴。」

「飴？」

「俺、嗅覚すげー自信あるんだ。だから独特な甘い匂いで分かった。持たせといてよかった。」

「うそだ、」

こんな顔を近付けなきゃ、しない程度の匂い。

「…さあね？」

顕嵐がニヤッと笑う。

冗談でも、自分をすぐに見つけてくれたことが嬉しかった。