26.in ページ27
気付いたら圭人の部屋に向かっていた。
走って走って、逃げて逃げて。
ただ、宏太から逃げたかった。
このままだと殺される、咄嗟にそう判断した。
しかし、だからといって涼介のところには帰れない。
停止した思考回路で、辛うじてそれだけは理解していた。
涼介の部屋の前を通らないよう、涼介の使う廊下を避けるよう気を付けて。
あとは、ただがむしゃらに走った。
途中で走りながらワンピースを身につけたところまでは覚えている。
ふと我に返ると、慧の目は圭人の心配そうな表情を見とめた。
「...どう?落ち着いた?」
視線を落とすと、自分の両手がココアの入ったマグカップを持っているのが見える。
そういえば、なんとなく口の中が甘いような気がする。
この生ぬるい温度といい甘ったるい味といい、圭人が慧専用に作ったものだろう。
「にゃ、ぁう...」
“落ち着いた...一応。”
「そっか、良かった。慧ちゃん、ずっと上の空だったもん。心配しちゃった。」
「にゃう」
“申し訳ない。”
「ううん、いいの。大変だったのは慧ちゃんだもん。こんな時くらい頼っていいんだよ。圭人達、お友達でしょ?」
「...ふんっ」
“お前と友達なんかになった覚えは無い。”
「あはは...そうだよね。ごめん。」
圭人は楽だ。
会話が成立するから。
秘密にしておきたかったことまで読まれてしまったこともあるけれど、涼介が不在の時は偶に頼ることもあった。
そして、だからこそ慧は圭人の癖を熟知している。
人の為に動くことは好きなくせに、その逆は苦手。
自分の為に動いたり、人を使うことが出来ない奴だ。
褒められたり謝られたりするのも苦手。
だから圭人は、わざと相手の気を損ねるようなことを言う。
それも、相手が傷つかない言葉や内容を選んで。
そしてその相手がまんまと策略にはまったら、圭人は自らを下げるんだ。
先程慧に告げたように、『ごめん。』と。
だからつい、圭人と会話を続けていると得体の知れない優越感に駆られる。
要するに、慧は今まさに圭人の策略にはまっているわけだ。
申し訳ないとは思う。
罪も無い圭人のことを一方的に傷付けてしまって。
だけど...
もう少しだけ甘えさせて欲しい。
甘えたい、誰でもいいから。
本当は涼介がいいけれど...もう、彼には会えないから。
「慧ちゃん...いいよ、甘えなよ。圭人は慧ちゃんの味方だからね。」
もうっ...勝手に慧の心読まないでよ!
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まなお(プロフ) - ひかやぶ愛ingさん» だから次は全員メインに持っていく!!頑張る!!!! (2018年11月9日 21時) (レス) id: 36d920dbb6 (このIDを非表示/違反報告)
ひかやぶ愛ing - あるのね笑まぁいいんじゃない?それも。幅広い人に見てもらえるしね〜! (2018年11月9日 19時) (レス) id: 2e64229429 (このIDを非表示/違反報告)
まなお(プロフ) - 岡本茉白@関西寄りのJUMP担さん» ありがとうございます!基本ハッピーエンドが好きなので、できる限りハッピーエンドに近くなるように心掛けているのでそう言っていただけると嬉しいです!今回もお付き合いいただきありがとうございました!! (2018年11月8日 22時) (レス) id: 36d920dbb6 (このIDを非表示/違反報告)
岡本茉白@関西寄りのJUMP担(プロフ) - 分かっているのですが、やっぱり少しだけ、「今回はHAPPY ENDじゃないのかな?」って勝手に予想しちゃったり...笑 次の作品も楽しみにしております!ゆっくりとまなお様のペースで、頑張って下さい♪長文すみませんでした! (2018年11月8日 21時) (レス) id: 6d6ad6adbc (このIDを非表示/違反報告)
岡本茉白@関西寄りのJUMP担(プロフ) - 完結おめでとうございます!!今回のお話は、私にとって色々考えさせられる内容でした...1話1話にハラハラドキドキしていましたが、皆幸せになってくれて良かったです♪まなお様ですので、内容がどんなに複雑でも最後は、必ずHAPPY ENDにして下さると (2018年11月8日 21時) (レス) id: 6d6ad6adbc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まなお | 作成日時:2018年9月1日 10時