失楽のウンディーネ【イナイレ】 (ページ49)

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神のアクアと呼ばれるそれはまだ研究途中らしく、報告書やら成分表が棚の分かりやすいところに散乱していた。

影山はこれを完成させる為に世宇子中を被検体として使っていたのだろう。

アランから電話がかかってきたのは試合終了10分前だった。

彼によると、報告書やら成分表に書かれたそれは元々私達が諜報活動の歳に飲んでいた増強剤と同じ成分が検出された為、ドーピングで間違いないそうだ。

目の前の鬼瓦警部に、私は研究室から送られてきたまた別の報告書を彼の携帯に送信する。

「相変わらずそっちは早いな」

「まあ伊達に最優の支部とは呼ばれてないということです。

……鏡(キョウ)さんには黙っていて頂けますか」

取引相手はアメリカ支部支部長と名乗る人とじゃあダメかと言うと、彼は首を横に振った。

「取引自体はそれでいいが……すまん、鏡からは見つけ次第連絡って形になってる」

「そうですか、無理を言ってすみません」

私は一礼して、彼に背中を向けて歩き出した。

会場は雷門の勝利で熱気に溢れていた、私は外から見える彼らに笑みをこぼす。

父と名乗る、有栖川鏡。

実際彼と私は血が繋がっている、親子だ、それを上手く飲み込めないのは私が彼の記憶が無いから。

私が記憶を失う前に起きた一家殺人未遂事件、私の体は襲われて足首を撃たれたということになっている、書類上は。

Aourで調べたアラン曰く、実際は、父の拳銃の誤射で私の足に当たったらしい。

どうしてそれを言わなかったのかは知らないし、興味も無い、ただ彼は私を避けたから私も避けるだけ。

それが当然だと思っている、今でも。

だから彼が、私を探す意味が分からなかった。

「……ああ、アラン、調べて欲しいんだ。

想定外が1つ。

円堂守、彼はきっと大物になるよ」

私はAourアメリカ支部の支部長、有栖川A。

『はいドクター、依頼頑張って下さいね』

「……嗚呼、ありがとう」

大丈夫、私はもう1人でも社会に溶け込める。