失楽のウンディーネ【イナイレ】 (ページ44)

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一言で表すと、圧倒だった。

隣の彼女は写真立てを強く握って苦しそうに観戦していたが、私は疑問に駆られていた。

異名まで持っていた私だったら確かにこれくらいは余裕でなせるだろう、だが世宇子中は最近まで無名だった筈だ。

実力もない無名を、影山が決勝まで押しやった？

何故、そもそもどうやって？

この試合を見れば明らかに直接的な手を下していないことが分かる、この12分、何も違和感は何も見つけられなかった。

なら間接的になら？

彼奴らは何を隠している？

何か策があるのだろうか、考えていると、唐突にも敵側の陣営が纏まって動き始めた、圧倒的な力を持っているのに？

そしてきっかり15分が立って、世宇子中のエースだろうか、彼がボールをフィールドの外へと蹴り飛ばした。

雷門中は満身創痍で、倒れているのも過半数、対する世宇子中は余裕で水分を補給して……。

水分？

彼ら全員が飲んでいたのは丁度15分前だ、まさか15分ごとに効果が切れる増強剤？

時期尚早とは言え、考え過ぎだろうか。

雷門の様子を見ていると何とも言えない悲壮感が漂っている、マネージャーの1人も不審に思った様で、先程から疑念の顔をしている。

あの髪の長い子、なかなか頭が回るだろう。

「円堂さん、私はこれで失礼します」

「え、もう帰っちゃうの」

「ええ、最後まで見れないのは残念ですが、急用が出来たので。

大丈夫ですよ、円堂なら」

大丈夫だと、思う。

やっぱり一点賭けは止めた方が良かっただろうか、それでも彼がまだ勝つのだろうという根拠の無い確信がある。

「ええ、……そうね」

「では、お先に」

さて、敵の懐にどうやって潜入しよう。