失楽のウンディーネ【イナイレ】 (ページ38)

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「こちらの素性は筒抜けって訳ね」

紙に書かれた√5の文字。

覚え方として有名なのは“富士山麓オウム鳴く”

現在富士山麓にあるのは、父が製造した宇宙船に見立てたあの空間。

「貴方をこちらに呼ぶには十分な記号でしょう？」

組織にはバレているようだ、少なくとも彼女は極秘情報であるはずのその大半を理解している様にも見えた。

「……何から話した方がいいかしら」

少しの沈黙、ようやく、精一杯体を使って絞り出した言葉はそれだけだった。

我ながらこんなに臆病な人間だったろうか、彼女はいつも営業スマイルにも似つかない笑みを浮かべている、私から見ても極めて自然である。

そんな人から蛇睨みでもされているのかと錯覚してしまう程の威圧。

「こちらから一方的に質問するだけですので答えて頂ければ。

出来れば緊張なさらないでください、我々は貴方が後暗いことを依頼するとは思っておりませんし。

まあ、そういうことを依頼されても個人で受ける方もいらっしゃいますから……。

……さて、そちらの依頼内容は護衛と協力でしたね」

……やっぱりただの少女だとは思えない、本当に彼女は要請を受けて動いているの？

高校生……いややっぱり、それよりも下だろうか、あの組織は実働もするとはいえ、この歳にしては大分貫禄があり過ぎる。

まさか支部の者？本部には時間的にも流石に届いてない……と思うし……。

いや、支部の者でも可笑しい、時間的にも、あのメモ書きがポストに入れられたのは昨日のこと、幾ら何でも早すぎる。

「……ええ、何か問題でもあったかしら」

「いえ、ただ如何せん、協力というのが抽象的だなあと」

「……サッカーよ」

「……？」

「マネージャーでもいいの」

「……もうちょっと詳しく、説明して頂けると」

私は少し思案する、そりゃそうだ、アメリカ支部とはいえ各国の中では随一の実績を誇ると過去、父から聞いたこともある。

その要請で動いている人にサッカーをしろとは中々上手く理解も出来ないだろう。

私は迂闊だった自分の発言に反省しつつも、目の前の彼女にことを掻い摘んで話した。

「……選手を集める為に、全国を回るのです？」

「ええ、そうです」

「今回のFFの勝利校の選手と共に？」

「はい」

「…………少々お待ちください」