失楽のウンディーネ【イナイレ】 (ページ33)

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sideアラン

研究室の夜はとても遅い。

それでいて、とても静かだ、皆それぞれが依頼や任務、本部への報告書作成をしなければならないから部屋にはパソコンのキーボードの音くらいしか響かない。

本部、Aourの本部、フランスの首都パリ。

その組織の支部の中でもトップクラスに優れているのがここ、アメリカ支部だ。

そして、たった数年でそこまで実績を上げた支部長は現在日本に居る。

そして僕たちは。

「ジャックゥ、頼むよ。

この報告書纏めてくんね？」

「誰がやるか誰が。

女にかまけてばかりの顔だけ野郎の癖に生意気な」

珍しく言葉のある夜だった、きっと紅一点の支部長が居なくて不安なんだろう。

ほぼ横の彼、若干クマが出来た気迫のある釣り目が長い黒髪から覗く、凄く疲労をため込んだ様な顔をしている同期に何だか同情した。

「仕方ないだろ、アリスちゃん日本に帰っちゃったんだもん」

だもんって、お前な……、と多少引き気味に目をやるガタイの良いそいつの傍に僕はコーヒーを置いてやる。

「何言ってるんです、貴方の仕事の三割は大体ドクターがいつも請け負ってるじゃないですか」

「報告書程度のヤツだぜ？

潜入もハックもクラックも、流石に最悪の想定が出来る様な仕事は任せてないだろ」

俺だってそこはわきまえてる心算、と胸を叩いて自負する彼にどうも呆れてしまう。

分かってるからタチが悪い。

「ドクターだって記憶を戻すので大変なのに、」

「そんなことより、俺は密偵を始末することが大変だ」

「ハンスッ！！」

傍のジャックが怒鳴りつける、僕は見たことの無い同期にびっくりして肩を揺らしてしまった。

「ジャックとアランは過保護だなァ」

「彼女はまだ１５にもなってないのに」

寧ろよくこれが心配せずに居られるか、と内心愚痴っておいた、彼は僕の中を見通すように軽くあしらい、悪かったよ、と告げる。

「だが彼奴は俺達より優秀なんだ、あの年で支部長クラスだぜ？」

「分かっている」