失楽のウンディーネ【イナイレ】 (ページ21)

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「私は君達が羨ましいよ、私はいつだって空っぽなんだから、……最近は君のお陰で楽しみが出来たけど」

これは事実なのだ、彼の話が日課になっていることはあながち間違いじゃあないし、彼の楽しそうな顔は見ていて清々しいくらいだ。

同年代の友人や知り合いが全くと言っていい程居ない私にとっては貴重な経験だ、そんな経験をさせてくれた円堂には少なからず、感謝しているのである。

それを言って、私は続けて彼に激励の言葉を投げ掛けていく。

「円堂、君はキャプテンなんだろ、だったらせめて仲間の前ではシャキッとしておけよ……はァ、たくもう、いつまでそんな顔で居るんだか」

「……ん、緑、ありがとう」

「例には及ばないさ、私達は一応友人なんだろ？」

私がそう言えば、彼は私をじっと見つめた。

何だ、君がこの前そう言ったんじゃあないか、もしや違ったのか？、と聞くと、

「そんな訳！

緑は俺の頼れる友人だ！！」

「……そっか」

自分で言ったことなのに、後味がとても悪い。

私は赤くなる顔を見られたくなかったので、彼の頭をグリグリとバンダナを押さえつけるように撫でてやった。

「わ、何するんだよ！？」

「いいじゃないか、甘えられるうちに甘えておいた方がいいぞ」

「何だよ、俺より年下の癖に……」

「嗚呼、私より年上の筈なのに、」

頼りないぞ、先輩、と言えば彼からバッシングを受けた。

「円堂」

「ん、何だ？」

「私は君の足長君だ、これから、そう呼んでくれないか」

私は君のあしながおじさんでありたい、とまではいかないが、それでも今は君の友人として。

「足長？」

「嗚呼、もう1回」

「足長！」

「嗚呼そうだ、私は君の足長だ！」

と、そんなことを言って巫山戯ていた、彼は家に居る母を思い出したのか、やばい、俺帰る！

と言って、やっぱり風のように去っていった。

「……風の又三郎」

ポンッと、思い出したものが頭に浮かんでは消えた、よく消える所は三郎君みたいだな……。

……いつか私のことも、話を聞いてくれるだろうか。

私のこと、私の色々なこと、有象無象を───。

「……やめだ、友人に、こんな聞いてて不快なことを言うもんじゃあない」

それでも、今は友人として、努力家な君のあしながおじさんになりたいというのは少し、おこがましいだろうか。