失楽のウンディーネ【イナイレ】 (ページ3)

今日:32 hit、昨日:9 hit、合計:89,650 hit

・ページ3

「大丈夫、大丈夫だよ。

私は記憶がないって何度も言っているだろう」

何も感じないのに、苦も楽も無いのに何を心配するのか、と言えば彼は眉を下げる。

治安だってそりゃあ母国である日本の方がずっといいだろうし、住みやすいのだから正直言って何も心配していない。

一つだけ悩みがあるとすれば、目の前の彼、アラン君が一人で自炊できるか、というものだった。

「大丈夫だと言っているだろう、私はそんな顔をするMr.アランの方が心配だが」

「ドクター……！」

後アランと呼んでくれ、と口を尖らせた。

「それを言うなら私こそAと呼んで欲しい。

その癖全く変わらんな……アラン」

「ドクターこそ、アランって呼んでください！」

と言って、彼は固まった。

「いま、アランって」

「さあ、どうかな」

もうすっかり寒くなってしまった。

研究室の皆で海水浴に出掛けたこともあったし、そのうちの一人が栄養失調で倒れたこともあった。

私がほぼ毎日、何か適当に作れるものを作ってやったし、その度に後輩はがっついていた、成長期か。

もうすぐ大人の癖に、そんな欠片も全く無い、そんな仲間と共に過ごせることはとても幸運だった。

「アラン、もう栄養失調で倒れたりするなよ」

後ジャンクフードも食べ続けるなよ、と言うと、彼は鼻を少し赤くして、はい、と返事をした。

新緑の5月、私は卒業する。