失楽のウンディーネ【イナイレ】 (ページ20)

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「……今日は来ないのか」

またとある日、すっかり夜に落ち込みそうな空をボールを蹴りながら掴む。

夕日の周りだけがとても明るい、これを鉄塔で見たらもっと綺麗なのだ、円堂に連れられて見たのが最近のいい思い出である。

一人でシュートの精度をあげようとしていたが、いかんせん飽きてしまった、今日はもう早めに切り上げようか、とボールを持ったその時、足音が聞こえ、反射的に振り向いた。

こんな時間なのに人だろうか、もしかしたら円堂かもしれない、でもこんな遅くに来たことあったか？

風になびく長い髪が少し邪魔で、その隙間から見えたのは、やっぱりいつも通りニョキ、ニョキ、と上がってくるオレンジ色のバンダナ。

しかし様子がいつもより可笑しい、いつもなら一気に駆け上がってくるのに、足取りが重そうだ、と彼の顔を見る。

「、円堂」

「……！

緑……」

「お前、その顔で此処まで来たのか！？」

……なんと今日はよりにもよって泣いていたのだ、私はそんな円堂にあたふたしながら背中を撫でてやる。

「何でわざわざ泣きながら此処まで来たんだ」

「だって、緑が此処に、いると思って」

原因は私か。

「……質問を変えよう、円堂、何故泣いている？」

「……豪炎寺が」

そこから彼は、ポツリ、ポツリ、と話し始めた。

話の内容を聞く限り、話の発端は例の転校生にあるらしい。

というのも、転校生の彼は過去、サッカーの試合で自分のせいで妹を昏睡状態にまで陥れてしまったのだそう。

償いとしてサッカーを辞めた彼に円堂は、サッカーをやろうと無遠慮に声をかけてしまったことに後悔しているのだという。

「……あー、」

「緑に、聞いて欲しかったんだ。

お前は凄く、頭がいいから、こういう時、どうすればいいかって」

「それで、私を頼りに来たと」

帝国学園にはどうやら1点もぎとって何とか勝てた様だ、しかしながらそんな達成感すら消してしまう程に罪悪に飲み込まれて居るらしい。

馬鹿者、と私は円堂の頭に軽くチョップした。彼は私の行動が予想外だったらしく、涙目を丸くして私の翠色の目を見た。

いつもの様に、研究室の皆にチョップしたのが懐かしい。

「円堂、君は優しい。

あのな、人の為に泣くことなんてそうそう出来やしないよ」

私だって尊敬するさ、そう言うと彼は大きな涙が出るのを頑張って堪えていた。