失楽のウンディーネ【イナイレ】 (ページ15)

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私は颯爽と去って行く彼に置いていかれ、ぽつん、とその場所に取り残されてしまった。

……なんてマイペースなんだ……私も人のことは言えないが、あれは、うん、凄い。

私も学校に、……嗚呼、大学は卒業したのか。そう思うと途端に寂しくなってくる。

アランは自炊しているだろうか、栄養失調で倒れていないだろうか。

ハンスやジャックはまた変なことやらかしていないだろうか、この前はハンスがコーヒー零してジャックの機材壊したからな……。

ついさっき別れた筈の彼らがとても恋しい。

あの資料や電子機器で散乱していた、アップルティーの匂いのする研究室が恋しい。

けれども、今回は何も覚えていない私の記憶を取り戻す為に日本にわざわざ戻ってきたのだ。

いくら殆ど諦めているとはいえ、此処でアメリカに逃げる訳には行かない。

天色の空を仰ぎながら、住宅街へと降りて行った。

嗚呼、今日は何だか少し、いいことが起こりそうだ、そう思えるくらいには足取りが軽かった。

家に帰って靴箱の棚を開けると待ってましたと言わんばかりに、サッカーボールが胸に飛び込んでくることなんざ知らないまま、私は帰り道を歩いて行く。

右足の、丸い傷の痛みはとうに無くなっていた。