なな ページ8
三「あなや、主はこのじじいめにもっと頼っても良いと思うのだが。」
穏やかな笑みを浮かべた三日月は、園子に襲いかかろうとした敵を斬ってそう言い放った。
しばらく呆然としていた光だったが、徐々に口許を緩めて己の臣下たちを見回した。
こんなにみんな頑張っているのに、私は何を血迷っていたのか…
「主命です!私が怪盗キッドとカタをつけます!六振りは時間遡行軍を倒し、ここにいる我が国民を全力で守りなさい!!」
頰を上気させながら言ったこの言葉は情けなくも震えていたが、みんなは嬉しそうに笑って応えた。
私は歩いて怪盗キッドの元へ向かった。
怪「これはこれは…お美しいお嬢さん。貴女のナイトたちはとても優秀なようで。」
「お褒めに預かり光栄です、怪盗1412号。あなたは、どうしてこの刀を盗むの?」
怪「それは…、過去を確かめたいだけですよ。」
少し言い淀んだ彼は、すぐに言い直して答えた。
「…嘘だね。あわよくば変えられたら、って思っている。賢いあなたなら、過去を変えたらどんなことが起こるのかわかるでしょ。それが罪であることも。」
その言葉を聞いた怪盗キッドは怒りを露わにした。
怪「あんたに…あんたに何がわかる。親父を失った俺の、何が…!」
「わからない…でも、多くの人の死を背負うことを君のお父さんは望んでるのかな?」
怪「…。」
「私にこれ以上言えることはないけれど、君が後悔しない道を選んでほしい。」
俯いて黙り込んで、数刻かの沈黙が落ちた。
その後、怪盗キッドはおもむろに顔を上げた。満面の笑みだ。
「え、」
怪「…ふ、はははは!親父の言葉、思い出してよぉ…なるほどな。お嬢さん、俺は貴女が思っているほど落ちぶれちゃいないようだ。」
ゆっくりとした足取りで私の目の前まで来たキッドは、私の手の甲に口付けを落とした…は!?
怪「ありがとうな、美しい姫。君に怒鳴ったこと、許してくれ。刀に関しては安心しろ、君のナイトたちがなかなかに手強くてな!そろそろこわーい名探偵が来るようなので、私はこれで。月光の下でまたお会いしましょう。」
敬語だかタメ語だか混ざったような言葉で捲し立てた怪盗キッドは、今度は頰にキスを落とすと、さっさと飛び立ってしまった。
恥ずかしさやらあっけなさやらで真っ赤になって腰を抜かした私は、この後の説教を甘んじて受け入れることにした。
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ルナ(プロフ) - 中々面白いです! 更新頑張って下さい! (2019年5月20日 17時) (携帯から) (レス) id: 66cf0ac4ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:PIKA | 作成日時:2019年5月19日 20時