検索窓
今日:9 hit、昨日:8 hit、合計:16,377 hit

きゅう ページ19

またグロ注意!
***
少し昔話をしよう。

突然だが、私は人間であって人間ではない。いわゆる現人神だ。

私が生まれたのは西暦800年。平安時代と呼ばれる時代だ。

貧乏な百姓の元で過ごしていた私は、幼少期から酷い扱いを受けていた。

長い銀髪に碧眼、どう見ても日本人ではない。両親は悪魔の子だと言って何度も殺そうとした。

食事、排便は当然させてくれない。刺されたり、溺れさせたり、火に放り込まれたこともあったっけ。

でも、私は生きていた。この頃から、自分は人間ではないのだと自覚をし始めた。

…感情も、無くなっていた。

しばらくして、両親が死んだ。

流行病だったらしい。両親と仲良くしていた百姓らは、皆涙を流していた。

それが私には、心底理解できなかった。

その日は、家の床で死んだように眠った。

目を覚ますと、知らない人のお家にいた。

五条国永という刀工だった。しばらくは彼の家にお世話になるらしい。

彼は良く笑っていた。ご飯もくれるし、お風呂も貸してくれた。

暇な時はよく遊んでくれたし、いろんなことを教えてくれた。

私のことを化け物だと言わなかった。

いつからか、彼のことを“父さま”と呼んでいた。

彼は私を娘のように愛してくれた。

ある時父さまが、私に作りかけの刀を見せてくれた。

それが、鶴丸国永だった。父さまはいつも鶴丸のことを自慢していた。素晴らしい刀だと。

羨ましい、と思った。生まれる前から父さまの愛を貰えるなんて、すごいと思った。

それから毎日、鶴丸に話しかけた。たわいもない話だ。

花が綺麗だの、ご飯が美味しいだの、父さまがすごいだの。

物言わぬ刀が、初めての友だった。

いつか父さまは、私たちのことを兄妹のようだと言っていた。

そのことが、とっても嬉しかった。

でも、幸せは続かなかった。父さまは死んだ。

初めて泣いた。哀しいというものはこんなに苦しいのか、と思い知った。

ヒトの命は儚い。あっという間に私を残して逝ってしまった。

それからしばらくは、どう過ごしていたのかわからない。

鶴丸に話す気も起きなかったし、何より生きる気力が無かった。

この頃には、私の身体の成長は止まっていた。

ある日、父さまのお師匠である宗近さまに見つかって、彼に引き取られた。

鶴丸と離れたくないと駄々をこねたが、彼は素晴らしいお家様に引き取られたのだと聞いた。

じゅう→←はち



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (26 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
110人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ルナ(プロフ) - 中々面白いです! 更新頑張って下さい! (2019年5月20日 17時) (携帯から) (レス) id: 66cf0ac4ec (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:PIKA | 作成日時:2019年5月19日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。