のろった人とのろわれた人・壱 ページ21
「あれ、今日憂太が一緒?よろしくね〜」
「よ、よろしく」
十月末。私の任務に付き添いが来ると言うので、誰かな〜猪野くんあたりかな〜などと呑気に考えていたら、来たのは憂太だった。
憂太は場馴れしてないからなあ。まあ私とならまず怪我はさせないし、丁度いいと考えたんだろう。多分悟辺りが。
「えっと、A……さん?は」
「Aでいーよ、なあに?」
「……もしかしてこれ、一人で祓うの?」
これ、と震える指で憂太が指すそれを、私も横目で見やる。
……見目にはそこまで大きくないが、燃え盛るその身体。中に三つの花弁状の炎を見せる、宙に浮かぶ炎環のような姿。うーんヤマンソかな?
これがクトゥルフ神話TRPGならSAN値チェック待ったナシだが、さんざ呪いの数々を見てきた私はもうほぼSAN値がゼロなので、「ほのお きれい」くらいの感想だ。
「まあ、準一級そこらって話だし何とかなるよ」
上手く行けば炎系能力が手に入りそうだ。私はすっ、と指を一本立てる。
「下がっててね、憂太。すぐ終わらせるからさ、終わったらお昼一緒にどうかな」
「う、うん」
「やった〜!君と里香ちゃんの話、聞かせてね」
私はひゅっ、と指を振り下ろした。途端、降り注ぐのは刃。無数のそれらは、呪霊の身体を串刺しにする。
何事かを呻きながら、抵抗のつもりかこちらに向かって飛ばされる炎。危ない、と憂太が声を上げるが、私にとっちゃ全く持って余裕なのである。
「『奈落』」
黒い円が口を開ける。私の前にひらいたその「大口」に、炎は呆気なく飲まれて消える。
「……うーん、本場中国の四川火鍋。ちょっと辛いな」
まあ、でも、悪くない味だ。味見を終えた私はぱちんと指を鳴らして、その呪霊の真下にまた口を開く。
「『嚥下往々』」
ずるり、と。
その深淵から手が伸びる。黒い手だ。影そのもののような、濃淡の無い、赤子のように小さく、細く、長い手が、何本も何本も伸びて呪霊を捉え、その奥へと引きずり込んでいく。
シリアスブレイクも意に介さず言うのならハガレンの真理の扉みたいなもんである。
「ご馳走様でした♡」
ぱちりと私が手を合わせると、その深淵は閉じられた。うーん満腹、満腹だ。まあ呪霊用の肚と私の腹はそのまんま別腹なので、ご飯はしっかり食べますけどね!
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雛(プロフ) - ひゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!!さいこう!!!すき!!!続きぃぃぃぃ!!! (2021年9月25日 2時) (レス) @page42 id: 6c5f13dd95 (このIDを非表示/違反報告)
シナト(プロフ) - 面白かったです!!もうストーリーが好きすぎます!!! (2021年4月4日 0時) (レス) id: 8c8daaf9e0 (このIDを非表示/違反報告)
7-10(プロフ) - わぱー!!!あっもう、はぁーーーーーん!!!すきです!!!!!!!情緒が反復横跳び!!!!!!!!!!!! (2021年3月3日 10時) (レス) id: ffef8138f8 (このIDを非表示/違反報告)
ぱるさん(プロフ) - 63:927393さん» 続編です!!!ありがとうございます!!!!私もコメント励みになります好きです!!! (2021年2月27日 14時) (レス) id: 96fc810d06 (このIDを非表示/違反報告)
ぱるさん(プロフ) - 鈴さん» 喜んでいただけて何よりです!!!ありがとうございます!! (2021年2月27日 14時) (レス) id: 96fc810d06 (このIDを非表示/違反報告)
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