ゝ・弐 ページ11
ともあれ、そんな私のクソデカ感情と呪力入りのポータルを特に拒否もせず身につけ続けてくれるような友人が三人もできたのは大変喜ばしいことで。
いや、私はどうも、少々浮かれすぎていたのかも分からない。世界の不条理というものを、私はすっぽり忘れていたのだった。
──2017年七月末。任務帰りの私に、神妙な顔をして、悟がそれを伝えてくれた。
「扇一家が、……壊滅した」
がん、と。
横から思い切り頭を殴りつけられたような気分だった。頭を過ぎるのは母の顔。おかあさまは、と掠れた声で呟いた私に、悟はただ首を横に振った。
私はそして、傑だ、と思った。予感は的中した。
「倒壊した屋敷から、微かにだが傑の残穢が見つかった。残骸の下から扇一家の人達の惨殺死体が見つかったよ。
ただ……気休め程度にしかならないだろうが、扇一烏乃華の遺体だけが、やたらと綺麗な状態で裏庭で発見されてる。多分、苦しまずに死んだんじゃないかって」
私は、漸く肩の力を抜いた。そうか、お母さんは苦しまずに燕の元に行けたのか。それならまだ、良かったのかもしれない。
傑はきっと、私が実家を嫌いだと言ったのを覚えていたのだ。私が母のために家を滅ぼそうとしていたことも、どこかで聞き及んだのかもしれない。
だからこれは、私の為に傑がやったのだ。なぜだかそう思った。
「……燕のお墓があるんだ。高専の近く。お母様、そこに入れてあげよう」
いやに静かな声が出て、自分でも驚いた。母が苦しまずに逝ったというその事実だけで、私は半ば救われたのかもしれなかった。
「死はね、救済なんだよ。この世の不条理、苦しいこと痛いこと、全てから開放されるから。でも救われるのは死者だけだ」
悟は黙って聞いていた。こういうところは、やっぱり少し傑と似ている。
「生きるって地獄だね。理不尽も苦痛も悲しみも、負の感情って止まらないし増えてく一方でしょう。残された側って、置いてかれた分後悔や諸々上乗せされるからさ。余計に地獄なんだよね」
「……」
「不条理の真っ只中で生きてたからさ、お母様と、燕は。死んで、救われたのかもしれないね」
私は笑った。今回は上手に笑えた自信があったのに、悟は苦い顔をして私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
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雛(プロフ) - ひゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!!さいこう!!!すき!!!続きぃぃぃぃ!!! (2021年9月25日 2時) (レス) @page42 id: 6c5f13dd95 (このIDを非表示/違反報告)
シナト(プロフ) - 面白かったです!!もうストーリーが好きすぎます!!! (2021年4月4日 0時) (レス) id: 8c8daaf9e0 (このIDを非表示/違反報告)
7-10(プロフ) - わぱー!!!あっもう、はぁーーーーーん!!!すきです!!!!!!!情緒が反復横跳び!!!!!!!!!!!! (2021年3月3日 10時) (レス) id: ffef8138f8 (このIDを非表示/違反報告)
ぱるさん(プロフ) - 63:927393さん» 続編です!!!ありがとうございます!!!!私もコメント励みになります好きです!!! (2021年2月27日 14時) (レス) id: 96fc810d06 (このIDを非表示/違反報告)
ぱるさん(プロフ) - 鈴さん» 喜んでいただけて何よりです!!!ありがとうございます!! (2021年2月27日 14時) (レス) id: 96fc810d06 (このIDを非表示/違反報告)
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