晩夏はきっと別れの季節・壱 ページ39
今日は、燕が任務で朝からいなかった。建人と雄くんと、少し遠方での任務だと言っていた。
「場合によっては遅くに帰ってくるかもしれません」と言って、燕はあのちょっと困ったような笑顔を浮かべた。私はうん、と頷いて、そしてなんとはなしに言ったのだった。
「建人と雄くんのこと、よろしくね。守ってあげてね」
燕は頷いて、そして高専を去っていった。
なんとはなしに、言っただけだった。そして私は、忘れていたのだ。
──燕が帰ってきたのは、その日の夜遅くだった。
建人と雄くんは傷さえ負っていたものの、私でも治せそうな、言ってしまえば命に別状はない程度の物だった。
問題は燕の方だった。
医務室の白いベッドに横たえられたその体を、私は愕然として見た。
綺麗な顔は血に濡れて、右の肩から先と、左の腰から先が無くなっていた。それでも彼は辛うじて生きていた。私はしばらく動けなかった。
「……お嬢さん」
私を呼ぶ声が、あんまり静かなものだから。
ようやく私は足を動かして、駆け出して、鉄臭いその体に駆け寄った。抱きついてしまいたかった。でも傷のことを考えると、私にはそれはできなかった。
「燕、硝子呼ぶよ」
「いえ、……必要、ありません」
必要無いわけがあるか。喘鳴の中やっと紡がれる燕の言葉を必死に聞き取りながら、私は残っていた左手を取った。
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ニノ崎(プロフ) - めっちゃ面白いです,,,好みドストライクです!これからも応援しております。後,伍話目の美美美ー美・美ー美美ってまさか某マルハーゲ帝国()のパロですか() (2021年3月2日 18時) (レス) id: 159ece0998 (このIDを非表示/違反報告)
ぱるさん(プロフ) - みもなるーと。さん» 丁寧なご感想たいへん嬉しいです、ありがとうございます!燕は扇一の自立に必要な犠牲だったのでちょっと……ね……これから扇一夢主、ガンガン男前に磨きがかかって参りますので何卒お楽しみ頂ければ幸いです! (2021年2月26日 19時) (レス) id: 96fc810d06 (このIDを非表示/違反報告)
みもなるーと。(プロフ) - なんだかクソデカ感情を向けてしまった(?)夢主に恋してしまうかと思ってしまいましたね… 最近は天候が崩れやすいのでお体に気をつけて無理せず頑張ったくださいチュチュ… (2021年2月26日 17時) (レス) id: d641c5035a (このIDを非表示/違反報告)
みもなるーと。(プロフ) - な、なんだこの小説は今まで生きてきた私へのご褒美かご褒美なのか。夢主のどこか達観した想像力などに惹かれました。燕さん私の推しだったのに食べちゃいましたね…やはり愛とは、呪いなのかしらと再認識できた気がします。素晴らしい小説をありがとうございます。 (2021年2月26日 17時) (レス) id: d641c5035a (このIDを非表示/違反報告)
ぱるさん(プロフ) - 43yomi1さん» ありがとうございます〜〜!!!更新頑張ります!! (2021年2月26日 16時) (レス) id: 96fc810d06 (このIDを非表示/違反報告)
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