呪霊食べる系幼女に転生しちまったんだが【呪術廻戦】

ゝ･弐 ページ19

要は傑の死に際に私が「劫腔」で傑の呪力を出来るだけ引っこ抜いた上でその能力を使用、めちゃくちゃ頑張って傑の呪力のみを「分割」する事で、傑の自我を持つ幽霊的な式神的な何かが作れるのではないか？という訳だ。


ただ呪力の見た目がまんま傑だと混乱を招きかねないので、その呪力の入れ物の方については追って考えようと思う。悲しいことに手持ちの能力では賄えそうになかったのだった。


最悪呪具にぶち込むしかないかな。こけしとかで良いだろうか。


「考え事ですか、お嬢さん」


おっと。うんうん首を捻っていたもんだから燕に心配をかけてしまったらしい。


私の明日着る着物を着物用のハンガーみたいなやつに掛ける燕は、案じるような目で私を見ている。


「あ〜……うん……お母様元気かな〜とか、ね」


渾身の嘘である。いや嘘ではない。あんなクソ家に一人取り残されたお母さんの身の上を思うと心が痛むのは本当だ。


「烏乃華様ですか」


お母さんそんな名前だったの？うのか……うのか……名前可愛いねお母さん。

私の言葉を受けて思い出すように目線を上げた燕は、一瞬考えてふっ、と表情を緩ませた。


「そう、ですね。……お元気そうでしたよ。あなたが居られないので少し寂しくはあるのでしょうが……高専での貴方の様子を聞くと、本当に嬉しそうな顔をされます」


……その表情があまりにも、あまりにも愛おしそうで、なんだか見てはいけないものを見た気分になった。


どう声をかけたらいいのかも吹き飛んでしまった。だって君のそんな顔は、今まで見た事がない。そんなに優しい声を君が出せただなんて知らなかった。


暖かいようなやわらかいような気持ちがふわりと湧き上がって、ちょっと微笑ましくなる。そして同時に思う。


「君がお父様ならよかったのに」


思わず漏れたその呟きに、燕は驚いたように瞬いて。困ったように照れたように微笑むと、「勿体ないお言葉です」だなんて言った。

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