等価交換は鉄則のオタク ページ31
「リリー、宇宙に行くんだね」
「そう、ソユーズの席を買ったの！とっても高かったけど、いい買い物だったなあ。帰って来たら、宇宙の話を沢山聞かせるからね」
「ソユーズからでも地球と通信できるよ？」
「直に会って話したいことだってあるでしょ？」
……叶わないのにな、と独り言つ。悲しい現実だ。けれど必要な事だから仕方ない。
私はただ曖昧に笑って、頷いて、それを言わないことしか出来ない。
時折、考える。もしかしたら、石化は起こらないかもしれない。もしかしたら、このまま普通に生きていけるかもしれない。
私という異物がこの世界にいる時点で、どこかが破綻しているかもしれない。淡い期待だ。でも、考えずにはいられない。そうであれば、どんなに良いか。
私はふと、手に持つアストロラーベを見た。しばらく考えて、私はそれをリリアンに渡した。
「これはなあに？綺麗！」
「アストロラーベ。ずっとずっと昔の、方位磁石みたいなものだよ。ちょっと前に作ったの」
「これを？すごい！器用ね、桐」
リリアンはアストロラーベを物珍しそうに見回している。彼女にはそれの使い方は分からないだろうが、それでもいいと思った。
或いは、彼女の「同行者」がそれを知るだろう。いつかの滅亡の時に、それを使ってくれれば、少しでも何かの助けになれば、それ以上の幸いはない。
懐中電灯より少し大きく、CDよりは多少小さい程度だから、きっと持ち運びにも困らないはず。
「それあげる。宇宙に持って行ってよ」
そんな願いを込めてそれを託したことを、リリアンはきっと、永劫知ることは無いだろう。
リリアンはきょとんと目を丸くしたあと、ひどく美しい笑顔を浮かべた。そして自分の付けていたピアスをおもむろに外して、私に託した。鈍く白銀色に光る、少し重たい、シンプルなピアス。
「じゃあ、交換ね」
あんまり無邪気にそう言うものだから、私も釣られて笑ってしまったのだ。
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ももこ - めっちゃおもしろかったです！文才過ぎてガチ小説読んでるみたいでした！ (11月9日 18時) (
レス) @page20 id: 1bc8f0fbc1 (このIDを非表示/違反報告)
癒し系猫(プロフ) - 名前変換は出来ないのでしょうか? (5月29日 21時) (レス) @page1 id: 0e8640f8c4 (このIDを非表示/違反報告)
ぱるさん(プロフ) - あやめさん» ｵﾜﾜ〜〜〜〜ありがとうございます〜〜〜〜！！！！ (2020年12月12日 20時) (レス) id: 2cc2b8ed9f (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - めちゃくちゃ面白かったです！！これからどうなるのか楽しみです！！！更新楽しみに待ってます！！！ (2020年12月12日 16時) (レス) id: 2cb5bf810d (このIDを非表示/違反報告)
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