憧憬のオタク ページ21
パーティは恙無く終わった。その足で、セーヌのほとり、この世で最も美しいものが集まる場所へ、足を踏み入れる。
古代エジプト部門、タニスの大スフィンクス、ネブケドの死者の書。古代オリエント部門、ナラム・シンの戦勝碑、ハンムラビ法典。古代ギリシア･エトルリア･ローマ美術部門、ミロのヴィーナス、ボルゲーゼの壺。立体作品だけでこんなにも見るものが沢山ある。
一日で回りきれるだろうか。こんなにわくわくしたのはいつぶりだろう。
とんでもねえことに龍水がルーヴルを貸切にしてくれたので、人酔いや待ち時間を心配する必要がないけれど、でもルーヴルってとんでもなく広いし沢山の作品に溢れているのだし。
「はああ、グランド･オダリスク……滾る……！」
「はっはー、桐は美術品が好きなのか！」
「うん、古いものを推尊するのが好きというか……美術は文化の発展の軌跡だから」
先人たちの紡いできたうつくしい品の数々。これが世界から消えてしまうのだと考えると、……惜しいなあ、と思う。今のうちに、できるだけ目に焼き付けておこう。
元々だ。元々、芸術と呼ばれるものに関心があった。前世は確か中･高美術部に所属していたし、大学では音楽をやっていた。多様に残された芸術は、文化が豊かである証拠。
私は人の紡いだ歴史が、遺した文化が、技術が好きだった。そう、これは、昔からだ。
「実用性や利便性も大切だとは思うけど、それでも、うつくしいものは心を豊かにするじゃないか」
石像の、あのかたくもやわらかなドレープを愛した。絵画の、伸びやかで鮮やかな青色を愛した。ふるいタペストリーの精緻な刺繍を愛した。かつての私を、それらは確かに形作った。
きっと最初で最後のルーヴル。目を細めて、ひび割れた絵の具の素晴らしい色味を見た。
「……貴様はまるで、恋でもしているかのようにそれらを見るのだな」
龍水がそう言ったので思わず振り返ると、なんだか眩しそうにこちらを見ていた。恋。恋？美術品に、私が、恋。成程それは、言い得て妙と言えるかもしれない。
「初めて見たぞ、今の表情は。やはり美しかった」
「だからって美術品の類とか贈ってこないでね？扱いに困るし」
「フゥン、欲しくはないのか」
「美術館が好きなの」
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ももこ - めっちゃおもしろかったです！文才過ぎてガチ小説読んでるみたいでした！ (11月9日 18時) (
レス) @page20 id: 1bc8f0fbc1 (このIDを非表示/違反報告)
癒し系猫(プロフ) - 名前変換は出来ないのでしょうか? (5月29日 21時) (レス) @page1 id: 0e8640f8c4 (このIDを非表示/違反報告)
ぱるさん(プロフ) - あやめさん» ｵﾜﾜ〜〜〜〜ありがとうございます〜〜〜〜！！！！ (2020年12月12日 20時) (レス) id: 2cc2b8ed9f (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - めちゃくちゃ面白かったです！！これからどうなるのか楽しみです！！！更新楽しみに待ってます！！！ (2020年12月12日 16時) (レス) id: 2cb5bf810d (このIDを非表示/違反報告)
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