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A「………チョコ、渡しにきた」
健「あ、今日バレンタインか」
A「気づかれへんよな、ごめん、ほんまに。うちだけこんなん渡しにきて。」
事前に考えてた“そろそろ糖分が必要だと思って、差し入れ！”なんて言い訳も出てこなくて、ポロポロと謝罪が出てくる
A「……これ、本命やから、ごめん、受け取って…お願い。受け取るだけでええから、」
顔も見れずにこじけんの胸に紙袋を押し付ける。
いいから、早く、受け取ってよ。
受け取ってくれたら、この場から逃げ出せるのに。
健「味見係してないんやけど、今年。」
A「…じ、受験だし、」
健「Aが今年は味見係してや？」
A「意味わからん、何が言いたいねん…」
健「味見係させたるーって言ってるんやけど」
A「それは、分かったけど…私、本命って、言うたとこ…」
受け取ってくれないまま、こじけんは意味の分からん話を続けた。
…恋愛フィルターかかってただけで、やっぱこいつ変人なのかもしらん。
健「期待しといてや、ホワイトデー」
A「…うん」
健「やから、今はお互い受験に集中しようや。
…ちょっとだけ、おあずけ」
『な？』って諭すように言ってきて、こじけんはやっと紙袋を受け取ってくれた。
また明日な！って、なんもなかったみたいにちゃんと私の家まで(言うても隣だけど)送ってくれた。
『アンタそんなに寒かったん！？！？もっとAちゃんこっちであったかくしてから行けばよかったやんか！』
ゆっくりとドアが閉まる直前、ダッシュで戻ったっぽいこじけんの家からこじけんのママの大声が聞こえた。
……寒さのせいか、私たちの顔はやけに真っ赤だった。
寒さのせいじゃないのは、私とこじけんだけが知ってた。
ホワイトデー…期待してもいいですか？
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作者名：こひな | 作成日時：2023年11月6日 2時
