毒にも薬にも【短編集】 (ページ24)

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健『今年なんか雑ちゃう？』

A『………女子会用やからええの！
あ、明日2組来てよ。余ったのんなら食べれると思うで』

健『A以外の作った可愛〜いスイーツ期待しとくわ』

A『ほんまにだるい、お世辞でも“Aのが1番です”っ言ってや！』

8年目

チョコチップ入りのスコーンと、アイスボックスクッキー。

私とこじけんは同じ高校に通っていた。

中学よりも緩くなった校則に甘えて、

お昼にはタッパーにバレンタインのスイーツをたくさん詰めて
他クラスも入り混じった交換会。

A『あれ、こじけんって1組にもおらん？』

『こじけん…？あー、、なんか2年の女の先輩に呼ばれてどっか行ったで』

『あれは本命やな！』

A『ほんまにー？あとで自慢されそうで最悪や』

余り物あげるって言ったのに、こじけんは居なかった。

予鈴ギリギリに戻ってきたこじけんの手には、丁寧にラッピングされたクッキー。

茶化されるのを少しだけ不機嫌そうにして違和感があった、中学の頃みたいにウキウキになるもんやと思ってたから。

勘って当たるんやな。

…バレンタインから少し経って、先輩とこじけんは付き合い始めた。

4ヶ月くらいで別れとったと思うけど、

一緒に登校してくのを見るのがなんとなく気まずくて
少しだけ早く家を出た4ヶ月間だった。

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A『…こじけん』

健『ん？』

A『進路、決めたん？』

健『あー、決めたで。教育学部ある大学、目指しとる』

A『…そっか』

幼馴染なんて言うけど、私はただ隣に住んでるだけの人やった。

…こじけんが先生目指しとるなんて知らんかった。

まだまだ大学が絞りきれない私は決断力のあるこじけんが大人びて見えた。

……取り残されてるみたいに感じた。

健『…今年はえらい気合い入ってんな』

A『来年、受験で忙しくて渡せるか分からんし。これで最後やったらごめんなぁ、9年間味見係してくれてありがとう』

健『あー、そういう…

9年間美味いもん食わせてくれてありがとうな』

9年目

マカロナージュに失敗して膨らみ損ねたマカロン。

受験勉強の邪魔したくなかったから、ぼんやりと自覚した恋心を伝えられなかった。

たぶん、来年も言えないくせにね。

なぁ、こじけん。マカロン渡す意味知ってる？

ま、知らんと思うから渡したんやけど、

“貴方は私の特別な人”なんやって。