毒にも薬にも【短編集】 (ページ22)

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君専属味見係　紫ページ22

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父親の転勤について行く形で小3の頃に引っ越してきた大阪。

大阪の中心部から少し離れた住宅街、間取りが全く同じ建て売りの一軒家が3つ並んでる。

その中の2つで、私とこじけんは育った。

幼なじみってやつだ。

越してきて、初めてのバレンタイン。

夏休み明けに転校してきたから、友達にどんなの渡せばいいか分からなくてソワソワしてた。

だから、

A『なぁなぁ、けんくん。わたしのチョコ、味見してほしい！』

健『ほんまにええの！？』

こじけんに味見を頼んだ。

その年から、こじけんは私専属の味見係になった。

1年目

溶かしたチョコをアルミカップに入れて、アラザンをかけただけの硬すぎるチョコ。

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ガリｯ

チョコを食べるにしては、硬すぎる変な音が健くんの口から聞こえた。

健『…うまいで、！これ！』

A『ほんと、、？
…ひっ、！健くん血出てる！！

お、おかあさーん！！！！！』

2年目

溶かしたチョコを棒を付けて、固めただけのキャンディー型チョコレート。

………ガッチガチだった私のチョコレートは、こじけんのぐらついてた乳歯をへし折ったらしい。

口から血を流しながら『うまいわ！』って喋るこじけんはホラーすぎて一生忘れないと思う。

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健『……上手くなったやん』

A『へへ、でしょ、？ユウマくん喜んでくれるかなぁ、、？』

健『喜ぶんとちゃう？知らんけど。』

3年目

人生初の本命チョコは、サッカー部のユウマくんに。

生クリームをいれることを覚えて、ちょっとだけ上達したブサイクな形の生トリュフ。

友チョコには、若干焦げたクッキー。

ちなみに、しっかりフラれた。

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健『今年はチョコとちゃうんや』

A『チョコ作りの才能ないの気づいたんよ』

健『……美味かったけどな、Aの作るの』

A『健はバカ舌だから信用ならん笑』

健『バカ舌ちゃうし！』

A『バカ舌でしょ！？』

4年目

ミックスドライフルーツ入りのホットケーキミックスで作ったパウンドケーキ。

だいたいこの辺りから、なんとなくこじけんに渡すのが習慣になってた。