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何時間そうやってぐるぐると考えごとをしていたのかな、
気づけば健が帰ってくる時間になっていた。
ドアの開かれる鈍くて重い金属音がして、
ドタドタと忙しなく廊下を歩く音が響く。
…普段となにも変わらないはずのそれに、
心臓がバクバクと音を立てた。
…言わないと、…変わらない。なにも、進めないから、ちゃんと…言わなきゃ。
A「…おかえり、」
健「ただいまー、今日早かったんや？」
A「あー、、うん。ちょっとね。」
・
何気ない会話をして、
健の方に顔を向けると、健の動きが止まった。
健「…顔色悪ない？」
A「そ、、そうかな、ぁ…？」
健「あーー、えぇって！座ったままで、ゆっくりしとき」
髪型とか、香水の変化には疎いくせに、
なんでこういうとこには気づくかな…。
私への真剣な視線が外されないまま、
健はソファの隣にすとん、と腰を下ろした。
健「…………A、泣いたやろ。」
健の優しく包み込むような声で、緊張していた心が少しだけほぐれる。
健「話したいこと、あるんやろ？
…ゆっくりでええよ、Aのペースでええから。」
安心させるように膝に置かれたままの手を取って、
ぎゅっと握られた。
子ども体温な健のじんわりとした暖かさが伝わってきたけれど、
…健の手も、私の手もほんの少し震えていた。
今まで、こんな風に“話したいことがある”なんて言ったこともなかったから、健だって不安なんだと思う。
それでも、私の様子がおかしいことを見抜いて優しく声をかけてくれた。
…………その優しさが伝わってくるだけで、覚悟を決めるには充分。
こんなに私のことを想ってくれる人なら、一生隣にいたってきっと後悔しない。
私、この人とこの先の人生を歩みたい。
A「あのね、健。
……私、赤ちゃんができた。」
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作者名：こひな | 作成日時：2023年11月6日 2時
