毒にも薬にも【短編集】 (ページ14)

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良規side

女の子やなぁ、って感じの甘いシャンプーの香りが鼻を掠める。

腕の中に収まって、きゅうって目をつぶって、あどけなくキスを待つ顔が可愛くてしゃあない。

いつもなら、このまま唇を重ねるけど、
今日は“聞かなあかんこと”もある訳やし、

いい子にキスを待つAをなにもしないまま、じぃっと見つめた。

ふるふるとまつ毛が揺れて、黒い大きな瞳に俺が映される。

困った顔で“してくれないの？”“どうしたの？”って顔で
こちらを見上げるA。

…こんなん、！生き殺しや…

我慢できずに貪りたくなってまうけど、
ぐぅ、っと下唇を噛んで我慢する。

良規「なぁ、“小島”って誰なんか教えて？」

A「…っ！よしくん、なんで、」

びくっ、と肩が震えて、驚きに目が見開かれる。

…こんなに驚くって、やっぱり、やましいことでもあったんやろうか。

すぐには言われへんような関係がもうあるんかなぁ。

こんなに、Aのことが好きで好きで堪らないのに。

…Aには俺の気持ちが伝わってなかったんやろうか。

どうしようもなく切なくなる気持ちを隠せそうにはなかった。

良規「…ちゃんと答えて、」