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リチャ「A、手紙…読んだで」
A「……ずるいやろ、うち。」
楽屋で2人きりになった瞬間に、声をかけた。
…結成して、仲良うなった頃はサシで飯行くメンバーも増えとったけど、Aだけは違う。
絶対に2人きりで飯に行こうとしない。
いつも3人以上にならないと顔出さへんし、誰かが帰るわーって言って2人きりになってしまいそうな状況すら避けて、
タクシー相乗りすることもなく、1人で捕まえて帰る。
だから、大事な話をすることすらこうやって楽屋で話すか、電話くらいしか出来んかった。
A「……良くも悪くもな、大人になってもうたわ」
切なそうに眉尻を下げて呟いた。
ポケットに入れたままの拙い字で書かれた手紙を思わず握りしめた。
ほんまにずるいわ。
勝手に告白してきて、掻き乱すくせになんでそんな顔するん。
A「…好き“やった”でリチャくん。」
A「もう、思い出されへんのよ。リチャくんのこと好きだった気持ち。
……大事なもんも増えすぎた。もう好きになることもできんわ、、」
心臓が鷲掴みにされたみたいにズキズキと苦しくなる。
人生かけて、色んなもん捨ててAぇを守ってきたAに
やっぱり無責任に“今から好きになっても遅くないで”なんて、
言えへんよ。
苦しいばっかでAのこと、好きな気持ちがあるのかすら分からへんし。
…なぁ、どうしたらええのかな。
A「言い逃げしてごめんなぁ、リチャくん。
今度、10年前のうちのこと
へら、と昔と変わらない笑顔を向けられる。
10年間で俺らはメンバーとして近づきすぎてしまったし、
想いは遠く離れすぎてしまった。
A「これからもリチャくんは、うちのだーいじな“メンバー”やで？」
ニコ、と笑って釘を刺される。
絶対に一線を越えないで欲しいって、苦しそうに満足気に笑っていた。
______結局、屍体を掘り起こしたところで
一度殺したAは生き返ることなんてないのだった。
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オマージュ元小説
桜の樹の下には/梶井基次郎
https://www.aozora.gr.jp/cards/000074/files/427_19793.html
↑没後数十年経っているので著作権切れております(青空文庫です)
梶井基次郎を選んだ理由→結成日と梶井基次郎の生誕の日が1日違いだったため。
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作者名：こひな | 作成日時：2023年11月6日 2時
