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「なん、で。今までの中也さんは優しかったのに……」

寝台に組み敷かれ、何もできない恐怖から涙が零れ、シーツを濡らした。
すると、ギラギラと獣のような光を宿していた中也の瞳が揺らぐ。

「な、泣くこたねぇだろ。」

中也は纏っていた革手袋を脱ぎ、指で涙を拭った。

「悪い、だが本当に傷つけてぇわけじゃねぇんだ。」

だから泣くな、と言いながら中也は寝台から降りる。その様子は昔の様な面倒見の良い兄そのもの。

すると涙を拭っていた中也の手が静止する。
その視線は私の首筋へと注がれていた。

「中也さん?」

「太宰、か」

憎々しげに太宰の名が呟かれる。
すっ、と中也の体が遠のき、そのまま扉へ向かった。

「A。俺らは本気でお前を大切に思ってる。此処からは出さねェよ。」

部屋を出る直前。振り向きざまに中也が言った。

重々しい扉が閉まり、外から鍵をかけられる。

「逃げられない、か」

溜息を漏らし、チラリとマジックミラーへと視線を移す。

恐らくまだ監視は続いており、下手な事はできない。

「太宰、さん」

誰に呟くでもない独り言が中へ溶けていく。

中也さんや芥川君、紅葉姐さん。皆いい人だった。だが今日会った芥川君と中也さんはまるで別人だ。何が彼らをそこまで変えてしまったのか、いくら考えても答えは出そうにな___「Aちゃん!!」


バァァンと盛大に開け放たれた扉。驚きに見開いた目でそちらを見ると、

「太宰さん!?」

はぁい、と手をヒラつかせて満面の笑みを浮かべる太宰が、コツコツと靴音を鳴らしながら寝台へ歩み寄る。

「何で此処に?って顔しているね。ちょっと野暮用で地下に捕えられていたのだよ。」

痛かったなぁと笑いながら手錠を弄る太宰。その手には女性が使うピンが握られている。

数分後、あっという間に手錠が外されて両手首が自由になった。

「ありがとうございます、あの……」

「さ、帰るよAちゃん。」

目の前に太宰の手が差し出される。しかし、すぐにその手を取ることが出来なかった。

「どうしたんだい?」

太宰さんが不思議そうに首を傾げる。

「私、本当探偵社へいてもいいんでしょうか。」

一瞬の事だった。

一瞬でこの部屋の空気が変わった。

原因は言わずもがな太宰。その表情は暗く、瞳には光が差していない。

ポートマフィア、最年少幹部の顔だった。

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ナキ - とても面白いです!更新ガンバって下さい!応援してます!! (2017年12月26日 10時) (レス) id: 09c9350497 (このIDを非表示/違反報告)
塩キャラメル - 芥川好きですわ〜w羅生門に一回抱っこされて見たいw羅生門撫でて見たいw (2017年11月18日 19時) (レス) id: ef2dbfdc67 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 面白かったです^_^皆に愛されて、ヒロイン、羨ましいです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2017年11月14日 0時) (レス) id: 8c0a96a096 (このIDを非表示/違反報告)
ささみ(プロフ) - くれーぷさん» コメントありがとうございます!敦が夢主に抱きついて、芥川が嫉妬っていう流れが書きたかったんです笑 (2017年8月22日 22時) (レス) id: 6b4aaf1703 (このIDを非表示/違反報告)
くれーぷ(プロフ) - 探偵社との再会のシーンめっちゃ好きですね。号泣して抱きついてくる敦可愛過ぎる← 題名見てすぐ飛んで来ましたwこれからも更新頑張って下さい(*´∀`)♪ (2017年8月22日 11時) (レス) id: d036a490f0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ささみ x他1人 | 作成日時:2017年8月14日 22時

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