8 狐の使い魔 ページ8
私が喜多川祐介と名乗った人物とやりとりをしていると、困った顔をした蓮君がそこに立っていた。
「ご、ごめんね…！ちょっと色々ありまして……」
「なんだ蓮、二人は知り合いだったのか？」
彼は冷静に蓮君に問いかけていた。
…さっきまでのあのテンションはなんだったのか…
「実は…」
蓮君は私とのこれまでの出会いから何までを喜多川君に話してくれた。
喜多川君は頷きながら最後まで話を聞いてくれた。
そうして私に向かい合うと…
「…大変だったんだな。先程は迫り寄ってしまって申し訳ない。
では改めて自己紹介をさせてもらう。
俺は喜多川祐介だ、よろしく。」
「菱田Aです、こちらこそよろしくね。」
喜多川君が手を差し出してきたので自分も手を差し出して握手を交わした。
うわ…年下と言えど手が大きいなぁ…
「無事に打ち解けられた様で安心した…」
蓮君は安堵の笑みを浮かべた。
「蓮君の周りには素敵な人がたくさん居るね。」
「あぁ、みんな頼れる仲間達だ。」
蓮君は少し誇らしげだ。
「菱田さんも、もし俺が力になれそうな事があったら是非話して欲しい。良ければ連絡先を教えよう。」
喜多川君のお言葉に甘えて私はうんと頷くと、互いに連絡先を交換した。
杏ちゃんや竜司君。
みんなとても優しくて、一緒にいるだけでこんなにも心に余裕が持てる。
記憶を失う前、私にはどんな友人がいたのだろう…
ほんの少しだけ、蓮君が羨ましく感じた。
「A、君も俺達の大切な仲間だからね。」
ポン、と。
肩に手を軽く乗せて彼は私にそう告げた。
ほんの少し、心臓が跳ねた──
そんな気がした。
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作者名：カルマ | 作成日時：2020年2月21日 23時
