23 交差する夢 ページ23
「あ、えと…久しぶり…？」
私が戸惑いながら答えると、彼はふっと優しく微笑んだ。
「やっぱりまた会えた。
…けどこんな所で会うなんてね。」
彼は私に近づくと、少し話そうと言った。
私も何となく彼と話をしたくて浜辺で2人並んで座った。
「綺麗だね、空。」
「ほんとだ… 海も光を反射して綺麗…」
特に代わり映えもしない会話。
けど、彼と話していると何だか切なくも安らぐような気持ちになる。
「不思議だね…君とは二回しか会ったことないのに、まるでずっと前から一緒に居たような気分だよ。」
少年は落ち着いた声でサラっとキザな台詞を言う。
…しかし、少年の言う事に同意の一言しか無かった。
「そうだ、Aさんの事、少し聞かせて貰えないかな。」
少年にそう言われ、私は彼にこれまであった事を話した。
「……そっか……
とても、とても大変な事に巻き込まれてしまったんだね。」
彼は私の気持ちを代弁する様に、瞳に悲しみの様なものが浮かんだ。
「ありがとう、話してくれて。
…あ、そうだ。次会った時にこれを渡そうと思ってたんだった。」
少年は思い出したかのように何処からか、小さな紺色の箱を私に差し出した。
「これは…？」
「開けてみて。」
言われた通り、私は紺色の箱を開けてみた。
すると、中には三日月型のサファイアをあしらったとても美しい懐中時計が入っていた。
「……っ…綺麗……いいの？こんな素敵なもの…」
「うん。何だか君を見た時から、これを贈りたい…そう思っちゃって。」
懐中時計からはｶﾁｶﾁと秒針の音が聞こえてくる。
─それは 『生きている音』
心臓の鼓動の様に温かい音だった。
「──もし 君が、本当の絶望を知った時、それを持って海に飛び込んで欲しい。」
少年は私の手を取ると、真剣な目で私にそう告げた。
「で、でも時計を持ったまま海に入ったら、壊れちゃうんじゃ…」
「大丈夫 針が止まらなければ…ね。」
こうして二人でまた他愛ない話をして、互いに笑った。
「─そろそろ君の友達が迎えに来るといけないし、この辺にしておこっか。」
「あっ…！そうだった…」
しまった、ついうっかりしていた。
「そうだ、今度こそ名前を教えなきゃ…
僕の名前は───」
「Aーーー!!」
「来てくれたみたいだね… それじゃ僕も、仲間が待ってるから─」
「あっ…待って！」
手を伸ばすも、少年は私の前から遠ざかってしまった…
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 114人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カルマ | 作成日時：2020年2月21日 23時
