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Another-28 ページ31

真っ白な空間でふわふわと浮遊する。

はっきりと意識が覚醒しない。

ここはどこなのだろう?

手を伸ばしても何も掴めない。

それよりも自分に手足があるのかわからない。

最適な温度に微睡んでいると遠くから何かが聞こえた。

誰が呼んでいるのだろうか。

俺は、僕は、一体何者なのだろうか。

俺は、ロシアで生まれた、ドストエフスキー様の従順なる僕だ。

ふと違和感を感じた。

そんなわけ無い。

僕は、日本で生まれたごく普通の社会人だ。

誰かが否定をするが頭がモヤモヤとする。

なんなんだこの感覚は。

例えるのが難しいが霧に包まれたような感覚が一番近い。

足掻いても答えが出ないもどかしさ。

すると耳元に少年のような青年のようなミステリアスな声が聞こえた。

「駄目ですよ、まだ貴方には役目がありますから。

"彼女"の領域に辿り着く唯一の可能性を持つ貴方を失うわけにはいかないのです。」

声の方向に意識を向けると知った顔の男が立っていた。

アメジスト色の瞳が妖しく光る。

瞳に意識を奪われたら神経が支配されていくのがわかる。

逆らえずに支配されることに身を委ねていくと満足そうに男は笑った。

「それで良いのです。

君はまだ眠っていれば良い。

僕の元に居る限りは心配することなどありません。」

何でだろう?何も、考えたくない。

「さて、共喰いも佳境に入ってきました。

そろそろ太宰Aを此方側に引き込もうと思います。

やるべきことはわかりますね?」

太宰Aをドストエフスキー様の操り人形にして横浜に戻る。

「そうです。それでは頼みましたよ。」

男が居なくなると自分からとは思えないような憎悪の感情が溢れてくる。

何故俺ではなくあの女が彼の人に目を掛けられるのだ。

そんな"彼"を"僕"はどこか他人事のように見ていた。

太宰A。

聞いたことも会ったこともない女性だった。


『ねえ、君って此方側の人間?』


ふとあの出会いを思い出した。

自分の体はあの男に支配されている。

この意識が何時まで保たれるかもわからない。

今の"僕"に出来ることは何もない。

どっちが本当の自分なのかわからなくなってきているのだ。

彼女の異能力を見て確信した。

あの問いに答えることはできないけど、

"同郷"の彼女になら伝わるだろう。

悪足掻きにすぎないが役に立つことを願う。

もし許されるのなら、僕は君と─────

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ユウ(プロフ) - 更新まってます! (2021年10月25日 13時) (レス) @page37 id: d7bd017054 (このIDを非表示/違反報告)
yuuna1202(プロフ) - 呪術廻戦とのコラボが見たいです!! (2020年12月8日 16時) (レス) id: 1a3b3ba982 (このIDを非表示/違反報告)
甘栗(プロフ) - クレハさん» そんなことないですよ!恥ずかしながらうっかり見落としていたので助かりました。ありがとうございます! (2019年11月21日 21時) (レス) id: 8ba49da6fd (このIDを非表示/違反報告)
クレハ(プロフ) - 甘栗さん» 初コメントが指摘ですいません!しかし、気になったもので……無理せず頑張ってください。 (2019年11月21日 21時) (レス) id: a8882568e6 (このIDを非表示/違反報告)
甘栗(プロフ) - クレハさん» 変換ミスしてました!教えていただきありがとうございます。 (2019年11月21日 21時) (レス) id: 8ba49da6fd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:甘栗 | 作成日時:2019年8月1日 17時

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