74話 ページ2
砂煙が落ち着くとそこには富受の姿はなく、太宰の上に覆い被るように庇っている女がいた。
暫くして女は太宰の上から飛び退き太宰の怪我がないか確認していた。
その女は見覚えのある黒髪だった。
記憶とその人と結び付いた時、太宰がその人に抱きついて姉さんと何度も繰り返した。
俺は気がつくとその人の名前を叫びながら走っていた。
中「Aさんっ!!!」
太宰を抱き締め返しながら振り向いたあの人は間違うことはない。Aさんだった。
彼女は眉をハの字にして笑った。
「中也も久しぶりだね。」
言いたいことが沢山あるのに声がでない。
口を開けたり閉じたりしていると
「その帽子使ってくれてるんだ。嬉しいねぇ。」
抱きついている太宰の背中を撫でながら嬉しそうに笑う。
本物だ。気が付くと視界が歪んでいた。泣いていたのだ。顔を隠すようにAさんの側でしゃがみこむとAさんは優しく俺の涙を拭った。
「心配かけてすまなかったね。」
嗚咽がこぼれて声にならない。首を大きく降って無事なら良いと伝えるとAさんはまた申し訳なさそうにはにかんだ。
遠くで芥川と探偵社の人虎が歪みに向かって攻撃を仕掛けていた。此方から意識をそらそうとしているのだろう。
ありがたくAさんとの再会を噛み締めていると
太「中也泣いてるの?」
中「あぁ?手前もだろ!」
ごそごそとAさんの腕の中から顔を上げて此方を見上げてきた。その顔は涙で顔を濡らし目が赤くなっている。見たことのない顔に笑ってると太宰はむかつくと呟いてまたAさんに抱きついた。
Aさんはくすくすと笑って
「相変わらず元気そうでよかったよ。」
Aさんが太宰の頭を撫でると太宰は猫のようにすり寄った。この野郎…そこ変われよ!
沸々としているとAさんに見えないように顔を上げてニヤリと笑ってきた。
殺す!いつか絶対に殺す!
怒りに拳を震わせているとAさんが歪みに視線を向ける。
「聞きたいこと、沢山あると思うけど今はやるべきことがある。」
だから───と続けようとするAさんを遮る。
中「わかってますよ、Aさん。」
俺は起き上がって真っ直ぐに向き合う。
太宰は涙を拭って立ち上がる。
太「全部終わったら全部洗いざらいはいてもらうからね。」
ちゃんと勝って帰るよと太宰が座っていたAさんに手を差し伸べる。
Aさんは目を見開き俺らの顔を見返すとにっと笑い太宰の手を握り返した。
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甘栗(プロフ) - ウナさん» どんどん中也さんの活躍増やしていこうと思ってます!ドキドキしてもらえるように頑張ります! (2019年4月4日 19時) (レス) id: 8ba49da6fd (このIDを非表示/違反報告)
ウナ - うわあ、もうかっこよすぎです、中也!!やばいですよもう!凄いです! (2019年4月4日 18時) (レス) id: 0bc8f10023 (このIDを非表示/違反報告)
甘栗(プロフ) - チョコ味の白兎さん» 確かに口調が敦君みたいですね(笑)色々な関係が動く予定なので楽しみしててください! (2019年3月30日 20時) (レス) id: 8ba49da6fd (このIDを非表示/違反報告)
甘栗(プロフ) - 雪宮暦さん» カッコいい中也を目指してるのでそう言って貰えて嬉しいです! (2019年3月30日 20時) (レス) id: 8ba49da6fd (このIDを非表示/違反報告)
チョコ味の白兎 - 最後のセリフが敦くんっぽい!ここからの展開が楽しみ! (2019年3月30日 17時) (レス) id: 8cc010c4ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:甘栗 | 作成日時:2019年2月28日 16時