第29話 ページ31
答えの出ない問題を考えているようで。
わからないこと、未知のことがありすぎて。
ここではきっと私の常識は通じなくて。
自分にはなんの力もない無力な存在で。
考えるほど、自分ではどうにもならないと言う現実を突きつけられる。
それが辛かった。
あの時私は、トイレに行った。
とった行動は一つ。
日常の中のなんでもない行動だったのだ。
先のことを想像するだけで胸をさす痛みは増していく。
『家族と最後に交わした言葉は“おやすみ”でした。お父さんもお母さんもここに私がいる事は知らない。部屋で眠ってると思っているんです……何も知らないんですよ……！』
声が震えて再び涙が溢れ出す。借りたハンカチで拭っても拭っても涙は止まらない。私がここに来たことで取り残された人たちがどう思うのか、どう過ごすのか。想像するだけで血の気が引き、涙が溢れる。
リリア先輩は何も言わなかった。だだ黙って、私の言葉に耳を傾けて聞いてくれている。
『お母さんに会いたいです……家に帰りたい…………！！やりたいことも大切な宝物も思い出も全部、全部この世界にはない！！行ってみたい場所だってたくさんあったのに……！！！なんで？なんで、わたし？どうして？わたし何かしたんですか？！私が……悪かったんですか…………？』
結局、私は半分喚きながら泣いていた。手には自然と力がこもり、私の手を包み込んでいたリリア先輩の左手をぎゅっ、と両手で握りしめる。
頭の中はマイナス思考でぐちゃぐちゃになった感情が暴れ回っていた。うるさかっただろうしめんどくさい状態だったと思う。もし、自分が初対面の人に突然こんな泣き方をされたとしたら戸惑ってしまうだろう。でも止められなかった。
頭の隅では良くないとわかっているのに抑えられない。私の心はそれだけ追い詰められていた。
リリア先輩は静かに私の隣に腰を下ろしている。
正論を言うでもない。
賛同するでもない。
ただ、心に寄り添っていてくれていた。
私の手を握りったまま、落ち着いた様子で背中をさすってくれている。
その手がやさしくて。
あたたかくて。
どれくらいの時間泣いていたのかはわからない。
ただ、借りたハンカチがベタベタになるまで、泣き止むことはできなかった。
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小崎相良(プロフ) - 錨絡さん» 台詞の中に違和感なく潜んでるのがいいですよね。そんな要素を探すのもツイステの楽しみですし、ツイステから入った方に、そういうささやかな楽しさを伝えていきたいです(o´艸`) (2020年8月9日 15時) (
レス) id: 5536140bcb (このIDを非表示/違反報告)
錨絡(プロフ) - 小崎相良さん» アリス、というかディズニー全般歌が多いから、余計に勘ぐってしまう…好きだなぁやっぱり (2020年8月9日 15時) (レス) id: b3cb4375d4 (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 錨絡さん» コメントありがとうございます。そうなんですよね！細かいところに原作の要素が散りばめられてて、気づくとあっ！ってなります。 (2020年8月9日 15時) (レス) id: 5536140bcb (このIDを非表示/違反報告)
錨絡(プロフ) - 春の庭、春の庭…アリス、……ゴールデンアフタヌーンを入れ込んでたのか…さすが制作陣。拘るなぁ…とても好き (2020年8月9日 9時) (レス) id: b3cb4375d4 (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - マチさん» コメントありがとうございます！お気に入りいただけてとても嬉しいです！不定期更新ではありますが、これからもよろしくお願いいたします。 (2020年7月28日 0時) (レス) id: 5536140bcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小崎相良 | 作成日時：2020年6月6日 10時
