【明治東亰恋伽】もしもがあるなら 参

【ナイルさんの行動を考える ５】 ページ35

鏡花くんの言う通りだ。
鏡花くんがいなかったらどうなっていたかわからない。



『ありがとうございます。鏡花くんがいてくれて、本当によかったです』



心からの気持ちだった。



『鏡花くんが近くにいてくれると心強くて、安心できますから』



「……あのさ」



少し言いづらそうに鏡花くんは目を逸らす。



「あんたが、僕にはわからない何かを抱えてるってことはわかるよ。僕が出会ってからのあんたはずっと人探しをしてた。騙されて人攫いにあったり、挙げ句の果てには探し人が“化け物”。魂依なのもあるだろうけど、グズどころか不憫だよね」



『……』



「でもそれでも前を向き続けられるのは、あんたの強さだと思うよ。あんたが自分の事をどう評価してるかは知らないけどさ」



鏡花くんの言葉が嬉しい。私がしてきた行動を理解して肯定してくれている。鏡花くんの中では私のしていたことは無駄ではないのだと、そう示してくれているのだ。



「もっと自信持ちなよね」



そう言って鏡花くんはぶっきらぼうにそっぽを向いた。その表情はわからないけれど、きっと照れているのだろう。鏡花くんなりに励ましてくれているのだとわかる。



『……嬉しいです。そう言ってもらえて……これからも仲良くしていただけますか？』



そう言って私は手を差し出す。
鏡花くんがその手をじっと見つめる。



「しょうがないから、話くらいなら聞いてあげるよ。僕の優しさに感謝しなよね」



私の手を取った力強く握ってくれた鏡花くん。
横を見ると鏡花くんも私のことを見ていた。なんだかおかしくなり、二人で笑い合う。川の水面には美しい赤い満月が映っていた。




幻想作家の彼が私の事情を受け入れて付き合うことになるのは、また別のお話。



【泉鏡花ルート・終】

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