【外の空気を吸いにいく ３】 ページ42
結論から言うと家だった。案内されたのは広い間取りの和風家屋。スタスタと中へと入っていく藤田さんを見て、ここが彼の自宅だと察する。もちろん踏み込んでいいものか迷いはあったが、腕を引かれているので立ち止まるわけにもいかない。
結局私は、案内されるまま歩いた。
「……ここで待て」
藤田さんは縁側に座布団を敷くと、掌でとんとんと叩いて部屋の奥へと引っ込んだ。
私は『失礼します……』と小声で断りを入れ、座布団へと腰を下ろす。縁側から見える風景は、なんてことのない “庭” だ。生垣があり、紅葉樹がある。豪華な装飾ではなく自然のまま、しかし手入れが隅々まで行き届いていることが素人でもわかる。なんとも、藤田さんらしい。きっと仕事だけでなく、日常生活でも真面目なのだろう。
あたりをくるりと見回すが、灯のついている場所は藤田さんが歩いて行った場所だけだ。その様子から、もしかしたらこの広い家に1人で住んでいるのではないかとさえ思う。
何分か経ち戻ってきた藤田さんは和装だった。私の隣に腰を下ろすと持ってきていた湯呑みを手渡してくる。
「粗茶だが……」
『！ありがとうございます』
湯呑みを手に取るとそれは暖かくて、じんわりと温度が手に伝わる。でもなんとなく飲む気になれなくて湯呑みをジッと見つめた。
「……何かあったのだろう？」
『！何故、』
「見ていればわかる。悪い輩にでも絡まれたか？」
『いえ……』
「……俺には話せないことなのか？」
『そういうわけでは……ないんですけど、その、っ……』
「……な、なんだ？！どうした？！」
目から涙が溢れ出す。藤田さんには訳がわからないことだろう。涙を止めなければと思うのに思えば思うほど溢れて止まらない。
私は手の甲で目元を拭う。拭っても拭っても頬を伝っていく。
「……目を擦ると荒れるぞ」
そう言って布で目元を拭ってくれる藤田さんの表情はとても困惑していた。
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小崎相良(プロフ) - Koma?さん» お返事遅くなりすみません！ありがとうございます！ (2022年1月22日 18時) (
レス) id: 6783c5a7bd (このIDを非表示/違反報告)
Koma?(プロフ) - ちょーぜつ面白いですね！最近めいこい見始めて最初に出会った作品がこれで良かったです！ (2022年1月16日 11時) (レス) id: 286de14237 (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 二酸化酸素さん» ありがとうございます！嬉しいです！ (2021年7月21日 22時) (レス) id: b1e523f101 (このIDを非表示/違反報告)
二酸化酸素(プロフ) - 本当にゲームをしてるような気分になりました (2021年7月19日 1時) (レス) id: f6be19e74d (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 鈴華さん» 楽しんでいただけたなら幸いです(o´艸`)！こちらこそ閲覧頂きまして、ありがとうございました！ (2020年8月4日 23時) (レス) id: 5536140bcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小崎相良 | 作成日時：2020年2月23日 10時
