第廿漆話＿真実 ページ41
「棟梁は大工の親方、つまり頭の名前です。雇われて下っ端として働いているのなら、棟梁の名前がわからないはずはありません。しかし彼は答えられなかった」
一呼吸おき、岩崎さんは再び太郎さんに鋭い視線を向けた。
突き刺すようなその視線とピリッと張り詰めた空気を向けられても、太郎さんは口を開こうとはしない。
「その理由は明白です。私が実業家であり、大林組との接点があった場合、間違った名前を答えればすぐに気づかれてしまう。それがわかっていたから彼は何も言えなかった。違いますか？」
「……」
『え、じゃあ、ナイルさんを見かけたというのは……』
「……」
声がかすれる。その先の言葉を私は予測できていた。しかし信じたくない。間違いであって欲しいという想いを込めて太郎さんを見つめる。
太郎さんからの返事は返ってこなかった。
太郎さんはじろり、とこちらを一度だけ見て、視線を岩崎さんへと戻したのだ。私の質問に答えたのは岩崎さんだった。
「嘘だと思います。彼はあなたを誘き出して何処かへ連れて行こうとしているんです」
「……さすが岩崎といったところか」
太郎さんの言葉に背筋を冷や汗が伝う。
この男の近くにいてはいけない。
とっさに距離を取ろうと足を踏み出したが、その判断は遅すぎた。太郎さんが私の後ろ襟を掴み、体を後ろへと引っ張る。勢いよく引かれた体は太郎さんの体に当たり、動きを止める。それは一瞬の出来事だった。
『っ……』
離してもらえないかともがいてみたが、男性の力にかなうはずもない。そのまま片腕も捻りあげられる。アニメの女の子が出すような可愛い声は出ず、低い呻くような声が喉から漏れた。痛くはないがすぐには状況が飲み込めず、瞬きを数回繰り返す。
やっと思考が追い付いて太郎さんを見上げる。
しかし、彼はニタリと嫌な笑みを浮かべていた。
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小崎相良(プロフ) - 閃光のまりあんぬさん» コメントありがとうございます！不定期な更新ですみません(>_<)藤田さんカッコいいですよね！少し不器用な優しさにキュンときます(o´艸`) (2020年2月20日 9時) (
レス) id: b334f4b37a (このIDを非表示/違反報告)
閃光のまりあんぬ - とっても面白いです！！ 更新頑張ってください！ 楽しみにしてます☆ ちなみに私は藤田さんファンです…！ (2020年2月19日 23時) (レス) id: 68c769878e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小崎相良 | 作成日時：2019年8月13日 19時
