第廿伍話＿質問 ページ39
岩崎さんは車から降りて私たちの前に立った。その表情は店であった時とは違い、笑顔を含まない真剣な顔。怖いくらいだ。
何か怒らせるようなことを言ってしまったのかと思ったが、その視線は太郎さんへと向けられているようだった。
太郎さんは先日協力を申し出てくれた大工のおじさんだ。
明治座からの帰り道で私に声をかけ、ナイルさんらしき人を見かけたという情報をくれたのだ。今日の座敷は8時からで時間のあったので、すぐに案内をお願いした。
太郎さんは快く引き受けてくれて、帰りの見送りもしてくれるらしい。なんと親切な人なのだろうか。
私自身ナイルさんとは長いこと会えていなかったので、気持ちはとてもそわそわしていた。遠足の前日の子供のようだと自覚しているが、言いたいことがたくさんあって、気持ちはなんとも落ち着かなかった。
しかし、目の前に立つ岩崎さんに少し不安になる。岩崎さんはとても賢くて聡い人だ。それは短い付き合いだが知っている。
「失礼、気になったことは解消しておかなければ納得できないんです。ですので、いくつか質問させてもらいます」
「……」
岩崎さんの言葉に、太郎さんが眉間にしわを寄せた。私に向ける笑顔とは違う引きつったような表情だ。
「出身はどちらですか」
「……埼玉だな」
「では仕事はどちらで？」
「勿論、東亰でだよ」
「成る程。どこかの組合の方ですか」
「おう」
岩崎さんは彼の反応を気にすることなく、淡々と質問を投げかける。太郎さんも同じように淡々と返答していた。
「では組合の名前を教えていただけますか？私、こう見えて実業家なんです」
「あんた、株で儲けたって噂の岩崎だろ？噂は予々、俺みたいな下っ端まで届いてるぜ」
「下っ端ですか。ということは大林組か大倉組あたりでしょうか」
「さすが実業家だな。俺は大林組だよ」
「そうですか」
そう言うと岩崎さんは顎に手を当て、眉間に深くシワを寄せ思案する。長い沈黙が続き、誰も話そうとしない。2人の間に入り、何かいうべきかと悩んでいると先に声を出したのは太郎さんだった。その声は私と会話していた時よりも低い。
「あんた、質問はもういいかい？この子を案内したあと送り届けなきゃなんねぇからな。急いでんだ」
※太郎さんの出身はあえて悪い印象を与えるために、岩崎さんと同じ埼玉県にしています。不快に感じる方は好きな県に脳内変換をお願いします。
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小崎相良(プロフ) - 閃光のまりあんぬさん» コメントありがとうございます！不定期な更新ですみません(>_<)藤田さんカッコいいですよね！少し不器用な優しさにキュンときます(o´艸`) (2020年2月20日 9時) (
レス) id: b334f4b37a (このIDを非表示/違反報告)
閃光のまりあんぬ - とっても面白いです！！ 更新頑張ってください！ 楽しみにしてます☆ ちなみに私は藤田さんファンです…！ (2020年2月19日 23時) (レス) id: 68c769878e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小崎相良 | 作成日時：2019年8月13日 19時
