Another:川上 ページ3
襖を開けて混乱した。
Aが寝転んでいる。
岩崎の膝の上にAが頭を預けている。
……いや、預けているだけではない。すうすうと寝息を立ててぐっすりと眠っている。
……普通逆じゃねぇか?
しかし何度瞬きをしても、客の膝に店員が頭を預けている風景しか視界に入らない。
「え、ちょ、あんた、なんて失礼なこ……」
混乱しつつも声を張り上げ用としたその時、岩崎が唇に指を当てて「しーっ」と静かにするように示した。
「こんばんは、音二郎君」
岩崎は囁くように小さな声で話す。
「おぅ。岩崎、どういう状況なのか説明しろよ。わけがわからねぇ……」
「先日とAさんの様子が違う気がしたので森さんに診てもらったんです。その結果、熱があるとのことでしたので……」
「熱ぅ?!」
声を張り上げ、ハッとして口元を抑える。
Aに目覚める様子はない。ほっと息を吐いて改めて様子を観察すると、確かに普段よりも頬が赤く、額にも汗をかいていた。
「……森さんが言うには、疲れやストレスからの発熱だそうですよ」
「まあ、それはわからんでもねぇな。慣れない環境で慣れねぇことしてるんだろうしよ。……お前がどういう意図でAを指名したのか知らねぇけど、あんまりからかってやんなよ」
そう言うと、岩崎は驚いたように目を少し開いてから大きな溜め息をついた。
「……失礼ですね。私はからかっているつもりはありませんよ。よくしていただいたお礼代わりです。先日、とても楽しい時間を過ごさせて頂きましたし、礼をするのは当たり前のことでしょう」
「……ならいいけどよ。本人から直接聞いたわけじゃねえが、こいつ多分天涯孤独なんだ。持ち物もほとんどねぇし、帰る場所もねぇ。夜は布団に包まって泣いてんだよ。ここに住むよう提案した手前、都合が良すぎるけどよ、Aを傷つけて欲しくねぇんだ」
「……そうですね。それについては私も同じ気持ちです。Aさんが仕事ではなく、心から笑える日が来ると良いのですが」
「……そうだな」
よしよしとAを撫でる岩崎。
ぐっすりと眠る姿に少々の罪悪感を感じつつ、Aの手をぎゅっと握った。
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小崎相良(プロフ) - 閃光のまりあんぬさん» コメントありがとうございます!不定期な更新ですみません(>_<)藤田さんカッコいいですよね!少し不器用な優しさにキュンときます(o´艸`) (2020年2月20日 9時) (レス) id: b334f4b37a (このIDを非表示/違反報告)
閃光のまりあんぬ - とっても面白いです!! 更新頑張ってください! 楽しみにしてます☆ ちなみに私は藤田さんファンです…! (2020年2月19日 23時) (レス) id: 68c769878e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小崎相良 | 作成日時:2019年8月13日 19時