第拾伍話＿芽衣さんと森さん ページ20
「！」
「はは、そう見えるかい？まあ、芽衣は私の婚約者だからね」
「ち、違いますっ！か、仮の婚約者です！」
『そうなの？』
「大体、お、鴎外さんには……」
『では、森さん的にはどうなんですか？』
「さあ、どうかな？」
『ほら、芽衣さん否定しないよ』
「えぇ……と？」
私は芽衣さんの肩を抱いて森さんから少し距離をとる。
森さんは一瞬おや、という表情をしたものの、にっこり微笑んでこちらを見守っている。
『嫌われてないなら頑張ってみたら？お医者様で軍人、まさに文武両道を体現したような人じゃない？』
こっそり内緒話をするように話しかけた。
私の言葉を聞いた芽衣さんは顔を真っ赤にする。
「そ、そうですけどっ」
『地位も権力もお金も持ってて、その上英語もペラペラ。そんな有能な人はそうそういないと思いますよ？それに、芽衣さんも森さんからの好意は嫌ではないのでしょう？』
「……はい」
『森さんかっこいいですし、芽衣さんも可愛いからお似合いだと思いますが……』
私がそう言うと、芽衣さんは両手で頬をむにむにと触りながら小声で「うー」と唸った。その頬は先ほどよりも赤く染まっていて、まさに恋する乙女。
私が小さくと笑うと芽衣さんもつられて笑う。クスクス笑い合う私たちを見て、少し離れたところにいる森さんは、小さく首を傾げていた。
「あ、そうだAさん！」
『はい？』
「宜しければ、何かお揃いで買いませんか？」
『どうして？』
「出会いも、別れも偶然なんです。私が未来に友達を残したままこの時代に来たように、私とAさんもいつ離れ離れになるかわかりませんし……その、お友達になった記念に！」
『……お友達記念ですか？』
「はいっ！お友達記念です！」
芽衣さんが力説する。うまく話を逸らされてしまったが、その熱量と友達記念という言葉になんだか心が暖かくなった。
たった数日しか会っていない私を、友達だと言い切る芽衣さんの真っ直ぐな気持ちが嬉しい。
芽衣さんの気持ちに応えるように、私はにこりと微笑み返す。
『私もいいと思います。芽衣さんとお揃い、嬉しいです』
「〜〜〜Aさんっ！！その顔は反則ですっ！」
そう言って芽衣さんは私の胸に飛び込んでくる。
……何が反則なのだろう？
その言葉の意味はわからなかったが、私は妹ができたようなそんな気持ちになり、飛びつく芽衣さんの体をしっかりと抱きとめた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 88人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
小崎相良(プロフ) - 閃光のまりあんぬさん» コメントありがとうございます！不定期な更新ですみません(>_<)藤田さんカッコいいですよね！少し不器用な優しさにキュンときます(o´艸`) (2020年2月20日 9時) (
レス) id: b334f4b37a (このIDを非表示/違反報告)
閃光のまりあんぬ - とっても面白いです！！ 更新頑張ってください！ 楽しみにしてます☆ ちなみに私は藤田さんファンです…！ (2020年2月19日 23時) (レス) id: 68c769878e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小崎相良 | 作成日時：2019年8月13日 19時
