第陸話_一日目 ページ8
ふ、と意識が浮上する。
『……』
視界に入ったのはなんというか、少しレトロな建物。コンビニやビルは見当たらず、見えるのは平家の家やレンガ造りの建物。和風の家はともかく、レンガ造りの建物は和と洋を足して2で割ったかのような不思議なデザインだった。洋風の家にしては違和感を感じるデザインだ。街灯は何故か青白く輝き、より一層建物の違和感を醸し出す。
ここは、どこだろうか?
夜なのは変わりない。
新月なのも変わりない。
けれど、どう考えても、何度見ても風景はおかしい。電柱も電線もなければ、道路もコンクリートで舗装されていない。馬車や人力車が走り、道行く人の殆どが着物を着ている。洋服を着ている人もいるものの、スーツや軍服に近いデザイン。
私が着ているようなパーカーやジーンズを着ている人は見当たらない。
考えても考えても、ここがどこだかわからない。キョロキョロ見渡しながら、とりあえず歩いてみる。
見知った景色にたどり着いてくれれば帰れるのだが、今のところ見える景色は変わらない。
それどころか、今度は提灯が見えてきた。
お祭りで飾るような赤い提灯だ。
しかし、周りに出店は見当たらないし、ヨーヨーを持っている子供も祭りやぐらも勿論ない。
周りに漂うのはお酒の香り、聞こえるのは女の人の笑い声。
視界に入るのは艶やかな着物を着た女の人と酔っ払いのおじさん達だけ。
『……』
困った。
どうしたらいいのかわからない。
そもそもナイルさんはどこに行ってしまったのか。あの人が何か知っていような気がするんだけど……肝心の本人がいないので話にならない。
道しるべもなければどうしたら良いのかもわからない。提灯街(?)は抜けたものの、歩いても歩いても知らない場所ばかりだ。
人見知りなので道行く人に話しかける勇気なんかない。幸いなことに鞄を持っているのでお金には困らないだろうけど。
何分歩いただろうか……やはり見える景色は知らない場所で変化はなかった。
流石に歩き疲れ、近くにあったベンチに腰掛ける。
ぼんやりと風景を眺めると、視界の端に“二八蕎麦”と書かれたのぼりが見えた。明かりが漏れているので営業しているようだ。
食べられるかもしれない。ものすごくお腹が減っているわけではないが、空が暗い。これから時間が遅くなればなるほどお店が閉まると考えた私は、取り敢えず蕎麦屋へ向かう。
蕎麦屋からはとても良い香りがしていた。
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小崎相良(プロフ) - あららさん» コメントありがとうございます!私も芽衣ちゃん好きです!こちらこそ、これからも宜しくお願いします! (2019年6月30日 20時) (レス) id: bb37bfea9e (このIDを非表示/違反報告)
あらら - めちゃくちゃ面白いです!めいちゃん好きなんで話に出てきて嬉しいです!これからも更新を楽しみに待ってます! (2019年6月29日 23時) (レス) id: 3866ce7f97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小崎相良 | 作成日時:2019年6月15日 0時