Another:川上 ページ21
働き出し初日。
思っていた通り、Aは真面目な子だった。
話を熱心に聞き、習ったことは一生懸命生かそうと動き回る。色々なことを一度にこなそうとすると、自分では上手くいかないことが分かっているのだろう。１つずつ、確実に、お客さんに失礼のないように必死に考え、接待している。
難点があるとすれば、集中すると表情が真剣になるところだろうな。接待をするときは笑顔で行っているが、他ごとをしようとすると表情が硬くなる。緊張が表面に出てきてしまうようだ。
仕事を終えた後の置屋。
布団を引きつつ、相良に声をかける。
「A、1日終わったけどどうだい？」
『どう、とは？』
Aは言葉の意図が理解できなかったようで、首を傾げる。キョトンとしたその表情は年齢の割に何処かあどけない。
「続けられそうかい？」
俺の言葉に少し考えるように目線を泳がせる。その後、意を決したかのようにこちらを見た。
『知らないことが多いですし、動き方も分からなくて、まだまだですけど、でも、やりがいを感じました』
「……！」
『明日も、宜しくお願いします ！」
そう言って頭を下げるA。
俺が「あいよ」と軽く返事を返すとAはにこりと微笑む。
「こちらこそ宜しくね、A。じゃ、おやすみ」
『おやすみなさい、音奴さん』
挨拶をしてから布団に潜り込む。
1日共に過ごしたからこそわかったAの一面。彼女の根は臆病だ。辛くても嫌なことをされても、助けを求められない。見守る者が必要なんだと、そう思う。
Aは最初は前向きで、やる気に満ち溢れた子だと感じていた。強いと思い込んでいたが、それは表向きの顔なんじゃないか。なんとなく、そう思う。
ふと何かを感じて目が覚めた。
聞こえたのは篭ったような嗚咽。
声の主は1人しかいない。
先に寝てしまったことを後悔した。
Aは、“臆病”なんだ。
気が付くべきだった。
あの時の言葉はAの見栄だ。
俺が余計な心配しないように。
気を遣わなくてもいいように。
精一杯の背伸びをしていたんだと今更気付く。
出会ってからまだ間もない。
仕方ない。
仕方ないが。
すぐに気付けなかった事が悔しかった。
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小崎相良(プロフ) - あららさん» コメントありがとうございます！私も芽衣ちゃん好きです！こちらこそ、これからも宜しくお願いします！ (2019年6月30日 20時) (
レス) id: bb37bfea9e (このIDを非表示/違反報告)
あらら - めちゃくちゃ面白いです！めいちゃん好きなんで話に出てきて嬉しいです！これからも更新を楽しみに待ってます！ (2019年6月29日 23時) (レス) id: 3866ce7f97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小崎相良 | 作成日時：2019年6月15日 0時
