第捌話_馬車 ページ10
『?!』
「こ、こんばんは……」
馬車から人が降りてくる。
現れたのは、頭に赤いリボンをつけた矢絣模様の袴姿の女の子だった。
『こ、こんばんは?』
「あの、はじめまして。私は綾月芽衣と言います……えっと、困ってますか?」
『え?』
そう言って芽衣さんはオロオロしている。
確かに困ってはいるけれど。困ってはいるけれども……見知らぬ人に『困ってまーす』とは言えないし。
そもそも状況が可笑しいので、言っていいものなのかもわからない。
かと言って無視するのも間違っている気がする……とりあえず、自己紹介はするべき、かな。
『……AA、です』
「Aさんですね!あの、えと、」
芽衣さんはそそっと近くに寄り耳元で囁く。
「あのですね、Aさんってタイムスリップして来ました?」
『え?!』
思わず声を上げる。パッと彼女から耳を離して芽衣さんを見つめた。芽衣さんは視線を合わせ、「私も一緒なんですよ」と笑う。
『え、芽衣さんも同じ……?』
「だと思います。私はもともとは高校生だったんですよね。今でこそ、居候してますけど……」
『あの、私、現状がよくわかってなくて。ここが知らない場所だってことしかわからないんですけど……』
「!……えっと、少しだけ待ってて頂けますか?」
『え、あ、うん』
そういうと芽衣さんは馬車の中に引っ込んでしまった。
何かを話しているのか、中からボソボソと声がする。
それから少しして赤い髪の男性が現れた。
赤い髪の男性は私の格好をじっと見つめる。見つめられる事が気恥ずかしくて、体を少し縮こませた。
「お待たせしました!私の居候先の家主の鴎外さんです」
『おうがっ?!え?』
聞き覚えのある名前に言葉に詰まる。当の本人は気にする様子はなく、クスクスと笑っていた。
「はじめまして、お嬢さん。申し訳ないが、今は神楽坂に向かっている途中でね。話をしたいのだが時間がない。申し訳ないが一度馬車に乗ってはくれないかい?馬車の中で話をしようではないか」
『え』
「Aさん……」
2人に促され、戸惑いつつも馬車に乗り込む。
断れなかった……もし変な人だったらどうしようという不安が頭の中を駆け巡る。
乗った手前、降りることもできないけれど。
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小崎相良(プロフ) - あららさん» コメントありがとうございます!私も芽衣ちゃん好きです!こちらこそ、これからも宜しくお願いします! (2019年6月30日 20時) (レス) id: bb37bfea9e (このIDを非表示/違反報告)
あらら - めちゃくちゃ面白いです!めいちゃん好きなんで話に出てきて嬉しいです!これからも更新を楽しみに待ってます! (2019年6月29日 23時) (レス) id: 3866ce7f97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小崎相良 | 作成日時:2019年6月15日 0時