最後の決断 ページ10
紙を持って考える。
いくら自分が帰る為だといっても、名前を書くべきではない……そう思う。
帰りたい気持ちはあるけれど、こんな手段で帰りたいとは思えない。
たとえ偽善だとしても。
自己満足だとしても。
大きく深呼吸をして、手に持っていた紙をビリビリと破りばら撒く。
投げた紙が小屋の中をふわりと舞った。
『誰の仕業かわかりませんが、他人の人生を踏み躙ってまで戻りたいとは思いません。この世界に留まります』
声に出して宣言した。
事象を起こした“誰か” が聞いていることを願って。
床と触れた紙切れは溶けるように消えていき、その後、じわじわと小屋自体も消え始めた。
気付いた時には空き地の真ん中。
振り返ると先程見送ってくれた、この世界での大切な人たちが立っていた。
「A君？……戻って…きたのかい？」
『……残ることにしました』
「ケロ、よかったの？」
『…他人を犠牲にしてまで、戻りたいとは思いません。情けは人の為ならず、ですよ。自分の行った良いことは回り回って返ってきます。だったら、皆さんに受けた“情け” をどこかの誰かに返したいと…そう思いました』
そういってにこりと笑う。
それが、今の自分に出来る精一杯だ。
「Aっ‼‼‼」
切島くんが駆け寄って来てそのまま飛び付いた。
驚いて固まっていると、わしゃわしゃと頭を撫でられる。
『き、切島くん？！』
「泣いたっていいぜ！Aはみんなのために決断したんだろ！」
『…！』
様々な気持ちがせめぎ合い、胸がぐっと苦しくなる。
複雑だった。
帰りたいと思った。
知らない人の為に大切な繋がりを切るなんてと思う。
でも。
誰かを身代わりにしたことで後悔はしたくない。
引きずりたくないとも思った。
だから破り捨てたのだ。
切島くんめ、堪えていたのになんて事をするんだ…
そんな事は知らない切島くんは、トントンと軽く背中を叩いた。
頑張ったな、とでも言うように。
優しさに包まれて静かに涙を流した。
肩越しに先生や友人達の笑顔が見えた。
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小崎相良(プロフ) - 楓さん» コメントありがとうございます！こちらこそ、読んでくださりありがとうございました。お気持ちがとても嬉しいです(っ´ω`c)また何か思いつきましたら執筆致しますね！P.S楓さん、呼吸は大事ですよっΣ（・□・；） (2019年6月1日 18時) (
レス) id: fd7aceb583 (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - 完結おめでとうございます！！長い間お疲れ様でした！小崎様の小説の書き方がとても好きで、とても上手くていつも物語に引き込まれて呼吸をつい忘れてしまうほどです。この小説も何度も読み返しました！小崎様の益々のご活躍とご多幸を心からお祈りしております！ (2019年6月1日 15時) (レス) id: 6bd4d01d86 (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - ゆきのさん» いえいえ！少し落ち込みましたが、付け続けて恥をさらす事態にならず良かったと、前向きに受け止めます。気を引き締めますね！ゆきのさんのお気持ちを知れた事がとても嬉しいです。お気遣いいただきありがとうございます！ (2019年5月23日 18時) (レス) id: fd7aceb583 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - あまり数字を気に病まず、気楽に活動してくださいね。さて、物語は佳境ですね。元の世界へ戻るには、自分と同じように、どこかの誰かを犠牲にしなければならない…夢主ちゃんはどんな選択をするのか。次回更新も楽しみに待ってます(*´▽｀)ﾉ(長々とすみません汗) (2019年5月23日 16時) (レス) id: ea954c48ab (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - オリフラが理由で低評価が入ってしまうと少し残念ですよね。作品の評価ではなく、行動のミスに対しての評価なので…。気休めですが10点の評価入れておきました。前作のお気に入り登録者数からしても次第に点数は上がっていくと思うので、(→) (2019年5月23日 16時) (レス) id: ea954c48ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小崎相良 | 作成日時：2019年5月23日 9時
