Another:蛙吹 ページ29
去り際だった。視界に写った何か鎖のようなものが伸びていることがとても気になった。
「あれ、なにかしら?」
「ん?蛙吹?」
「なになに?」
近くにいた切島くんと芦戸さんが振り返る。
視線の先を見て同じく二人も鎖に気がついたようだった。
「鎖?かなぁ?」
「広場に鎖なんかあったか?」
「わからないわ。違和感を感じたのよ」
「梅雨ちゃんの蛙の本能ってやつ?」
「それを言うなら野生の勘、だろ(笑)なんだろうな?」
「見てくるよ!」
芦戸さんがそう言って駆け出し、一直線に茂みへと向かう。
後を追って目にしたのは、同年代の子が頭から血を流して倒れている姿だった。
上からだと茂みに隠れてしまい見えない位置。
先生たちはきっと気づいていない。
3人で顔を見合わせる。
「「「……」」」
「
「……けど、首輪に鎖が繋がってるぜ」
「確か、あの主犯の男の隣に居たわ」
「「……ってことは
「そうとも言い切れないのよ……この鎖を主犯の男が持ってたの」
「それって、従わされてたってことじゃない?」
敵とは言い切れない理由がそこにあった。
首輪に繋がれ、服装も簡素なもの。見た目も華奢で栄養が足りているのか心配になるくらい。
それに加えての怪我。敵かもしれないとはいえ、正直、戸惑う。
「それに、怪我をしているわ」
「頭ぶつけたのかな?」
「原因はわからないわ、けど頭部の怪我は見過ごせないわね……先生に知らせたほうがいいかしら?」
そう話していた時だった。
いつのまにかパッチリと目を開けたその子がこちらを見つめていることに気づいた。
叫んだり、逃げ出そうとする様子はなく、目を見開いてじっとこちらを見つめている。
その表情は驚きと恐怖が入り混じったようなそんな表情。
一瞬、声を掛けることを躊躇った。
その合間にその子は、近くにあった石に唇を落とす。
次の瞬間、頭上から石の雨が降って来た。
咄嗟に飛び退くが、石の雨は先程立っていた場所に降り注いでいた。
私たちを視界に入れる様子はない。
「梅雨ちゃん、切島くん大丈夫?」
「平気よ」
「あぁ。これはあれだよな、威嚇してるんだよな」
「そうだと思う……」
「ケロ……」
痩せた体を震わせながら、誰もいないその場所に石の雨を降らせ続ける姿を見て、心苦しくなる。
まるで「触るな」と言われているかのようなその反応に、私は、どうしていいのかわからなかった。
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小崎相良(プロフ) - 評価150票!皆様、ありがとうございます!嬉しさでにやにやしております(笑) (2019年7月12日 19時) (レス) id: be5de34a4a (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 瀷さん» コメントありがとうございます!頑張ります(´∀`*) (2019年6月1日 20時) (レス) id: fd7aceb583 (このIDを非表示/違反報告)
瀷 - 弔推しなんですけど、初登場が可愛いw頑張ってください! (2019年6月1日 19時) (レス) id: 3960a531d7 (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 充希さん» ありがとうございます!どの場面でしたか?訂正したいので、教えて頂けると嬉しいです (2019年3月13日 23時) (レス) id: 4835e70326 (このIDを非表示/違反報告)
充希 - オールマイトの一人称は僕ではなく、私です! (2019年3月9日 13時) (レス) id: 1c94acc086 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小崎相良 | 作成日時:2018年9月30日 14時