第3話:異世界 ページ5
家の形も、表札も、止めてある車も……全てが違う。
『ここ、ですか?』
「ん?」
『さっきの住所、の場所ここなんですよね。もしかして間違ってました?』
「なんの話かわからんが、この家が君の自宅ではないのかい?」
『……』
答えられなかった。この家ではない。それは確実であった。表札にも佐藤太郎と掘られている。けれど、ここは住所を伝えて案内された場所だ。住所という情報を失った。
これ以上はどうしたらいいのか、もう自分ではわからなかった。
「何か事情がありそうだね……一度うちへ戻ろうか。詳しく、聞かせてくれるかい?」
『……』
黙って頷いた。もう自分1人ではどうにもならない、そう思った。
ーーーー
夫婦の家に戻るとお婆さんがお茶を入れて待っていた。湯呑みは3つ、用意されていた。まるで、戻ってくることがわかっていたかのように。
「あら、お帰りなさい」
「ただいま、ばあさん、やはりこの子の家ではなかったよ。そこで相談したいことがあるんだが……」
……やはり?まるで行く前から知っていたかのような言い方に引っかかった。このおじいさんは知っていて案内をした?
『……あそこが我が家ではないとご存知だったんですか?』
「あぁ、なんせ佐藤さんとはコーヒー仲間でなぁ。息子がいるのは知っていたが、もう三十路だったはずだからな。それに最近その一人息子も上京したとそう聞いていたしなぁ……」
ご近所付き合いがあり、把握していた、ということか。
『……すみません』
「いや、口で言うよりも見た方が早いと思ったから案内したんだよ。百聞は一見にしかず、と言うだろう?どんなに言葉で伝えても信じられなければ、それは無駄な労力になってしまうからな」
そうあっておじいさんは困ったようにニコリと笑った。
それから、おじいさんとおばあさんに今の自分にわかっていることを包み隠さず伝えた。
自分は帰宅途中に小屋に入ったこと。小屋の扉が閉まり、開けたら森ではなくここにたどり着いたこと。家がないこと。
おじいさんもおばあさんも親身に話を聞いてくれた。
それだけでとても気持ちが和らいだ。
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小崎相良(プロフ) - 評価150票!皆様、ありがとうございます!嬉しさでにやにやしております(笑) (2019年7月12日 19時) (レス) id: be5de34a4a (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 瀷さん» コメントありがとうございます!頑張ります(´∀`*) (2019年6月1日 20時) (レス) id: fd7aceb583 (このIDを非表示/違反報告)
瀷 - 弔推しなんですけど、初登場が可愛いw頑張ってください! (2019年6月1日 19時) (レス) id: 3960a531d7 (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 充希さん» ありがとうございます!どの場面でしたか?訂正したいので、教えて頂けると嬉しいです (2019年3月13日 23時) (レス) id: 4835e70326 (このIDを非表示/違反報告)
充希 - オールマイトの一人称は僕ではなく、私です! (2019年3月9日 13時) (レス) id: 1c94acc086 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小崎相良 | 作成日時:2018年9月30日 14時