大悪党と駆け引きを【名探偵コナン】【救済】

悲しみよ、ありがとう5 ページ47

ゼロに所属するものは、誰にもそのことを話してはならない。もちろん家族にもだ。そうやってゼロに所属する存在は厳密に秘匿されている。


しかもその2人は、その恐るべき能力と実力からツートップとまで言われていて、たった2人でその巨大な組織に痛手を負わせるほどの人物だったから尚のこと。


その組織も目を皿にして彼女らの両親の情報を探していることだろう。





そしてもし、もしもその組織が倉敷家の情報を得て2人に子供がいることを知ったら。





彼女を捕らえ組織の駒にするであろうことは想像に易い。




「はぁ…………考えたくもないがな」




………2人の長所を合わせたような彼女が敵に回るなんて想像したくないほど恐ろしい。



当時、倉敷家に関する情報を秘匿した現警備課長はそれだけで称賛に値する働きをしたと言える。


幼い彼女の能力に関してはまだ誰も知る余地がなかっただろうから、念のため隠した、というところだろうが。普通ならそれで十分なのだ。


最悪の事態というものはなかなか起こらない。何しろ最悪の事態なのだから。






しかし。






しかしだ。A家双子誘拐死傷事件で彼女の存在はバレたと言っても良い。


おまけに夜闇の中でも崖や亀裂なんかを飛び越え、獣さえ通れないような道なき道ですら駆け抜けてしまえるという身体能力も恐らくバレただろう。



これを最悪の事態と言わずに何というのか。………組織が彼女に接触しなかったのが唯一の救いか。



恐らくその巨大組織は誘拐事件から数年が経った今も、2人の長所を引き継いだ彼女のことを血眼で探し続けているだろう。





そして。





「あまりにも…………あまりにも似ている…………。」





一体何の因果なのか。



その組織こそ、彼女がこれから潜入しようとしている組織なのだ。



彼女は知ってか知らずか、両親と非常に似ている道を辿っているのだ。



ゼロに所属し、その組織と関わって尊い命を散らした彼女の両親と非常に似ている道を。





それから彼女は一応カツラを被り男の体型に変えているのだろうが。



あの特徴的な、燦然と輝く全てを虜にしてしまいそうな金の瞳。



そしてあの美貌は。




「…………彼女が組織に潜入する前に一波乱ありそうだな」




今のウラの理事長だけでなく、次期ウラの理事長である黒田兵衛に変装してる私にも彼女について詰問されることは想像に易い。



そんな少し先の確実に来るであろう未来を思い、ため息を吐いた。

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