大悪党と駆け引きを【名探偵コナン】【救済】

悲しみよ、ありがとう2 ページ44

ウラの理事長(務武さん)side



最後に見たときは、あどけなさと頼りなさを漂わせていたのだが。


今はそれを少しは残してはいるものの、あどけなく、華奢な美貌には、今や苛烈なまでの迫力が滲んでいる。………ここに来るまで一体どれほどの修羅場を乗り越えたのか。




………まさかここまでとはな。




小柄ながら、まるで猛禽類のような獰猛さを湛えたその金の瞳がまっすぐ俺を貫く。本当は、ここで止めるつもりだったのだが。



自分の恩人ということもあるが、彼女が幼い時から知っている身としては、あの様な危険な組織に潜入させたくないのだ。それも一人で。

しかし彼女を止めることは不可能なのでは、と思わざるを得ないのだ。今の彼女にはそれほどの気迫があるのだ。


だが引き止めたいのだ。


それが上の意識に、そして彼女の意思に反していても。もはや私にとって彼女は娘のような存在なのだ。




「………戻れるのは今だけだぞ。分かっているだろうが命令を聞けば後戻りはもうできない。」



「今更何を言うかと思えばそンなことかよ。俺は全部承知の上でここに立ってる。」



「これから考えきれない程怪我をするだろう。その度にお前の血が流れることになる。

それでもか？」



「大切なモンを守るために血を流すことのどこに恐れる必要がある」




………言葉がひどく重い。それもそうだ、彼女は何年も戦い続けている。大怪我を負ったこともあるのだろう、その度に多くの自分の血を流してきたのだろう。


しかしその度に彼女は彼女の仲間(大切なモノ)を守り抜いてきたのだろう。




「お前はま(・) た(・)大事なモノを失う耐え難い悲しみに襲われるかもしれないのだぞ？

本当に命令を聞くのか？」



「失う悲しみを知っているからこそ今のわ(・) た(・) し(・)がいる。

だから悲しみに感謝すらしてンだ！！お陰で以前の自分よりずっとずっと強くなった！！

もう逃げねェよ、どンなことからも。」




一体どれほどのモノを背負えば『悲しみに感謝している』なんて言葉が出るのか。


目の前の小さく儚い、すぐに壊れてしまいそうな少女には、その外見とは反対に誰よりも強く堅い信念を持っている。


きっと彼女は誰にも止められない。




「そうか……。なら行けA。

その悲しみでお前の全てが崩れ果てるまで真実を覆い隠す霧を一掃しろ。

その代わり、靄一つ残したら許さんぞ。」



「言われずともなァ！！」

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