大悪党と駆け引きを【名探偵コナン】【救済】

悲しみよ、ありがとう ページ43

目の前に立ちはだかる艶々とした光沢のある、濃い褐色の木材が使われているドアを見上げる。



あ、あれ？ドアってこんなに大きかったっけ！？つかなにこのドア怖い！！なんでドアから威圧感出てんの！？わけわからん！！



なんというかマジでこの先にラスボスがいそうである。いやいるんだけども。務武さんはラスボスじゃないけどあの威厳はラスボスレべルだわ。



なんて必死に現実逃避をするけど足が竦む。………いや情けなさすぎだろしっかりしろよわたし！！



でもこの扉を見ると、なんというか実感せざるを得ないのだ。自分が背負ってるモノを。



わたしはあの組織に乗り込む前の今でさえ、たくさんの命を背負っている。つまりわたしが斃れたら他の人にもしわ寄せがいく。



わたしに始末されたはずのNOC達が生きているってバレる可能性も高い。




冷や汗が背筋を伝う。息もうまくできない。




自分の命はどうでもいい、なんて言えなくなった。自分の命に直接、他人の命が結びついてるから。


わたしが命を賭けるということは、わたしに命を預けてくれたNOC達の命も賭けるということで。




彼らの笑顔が脳裏に浮かぶ。




彼らが命を賭けるだけの価値がわたしにあるのか。


いや、彼らはわたしに賭けるしかなかったのだ。




なら推理力のないわたしにできることはやっぱり組織の情報を抜き取ることくらいで。


それと潜入中の他のNOC達の命をできるだけ守ることくらいかな？




………今度こそ、今度こそ大切なモノ全てを守りたい。




もう一回扉を見上げる。




「…………っふぅ」




息を深く吸い、短く吐いて、いつの間にか入っていた力を抜いて、緊張で乱れていた息を整える。




「絶っっ対に守り切る……！！今度こそ！！絶対に！！」




重厚感のある扉を両手で押す。ここからはAじゃなくて公安の参事官であり、警察庁警備局警備企画課(ゼロ)に配属された倉敷 ハクとして振る舞う。

たぶん務武さんも管理官じゃなくてウラの理事長(キャップ)として振る舞うはず。



………いや、これからの任務の内容的に、わたしは参事官としてじゃなくて、ゼロの一員であるシキとして振る舞ったほうが良いかな？よし、そうしよう。



でも口調とか態度はブレずに悪党の王道的な振る舞いで(バチバチにオラついて)行くぜ！！




「初めましてだなァ………！ ウラの理事長(キャップ)サンよォ」



「あぁ、初めましてだ。倉敷 ハク。」

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