きみのせかい ページ48
※
「おー、おかえり！」
「…、」
一言も言葉を交わさなかった学校を終えて、
スンチョルさんのお店へ向かうと、いつもの笑顔で出迎えてくれた
いつもの笑顔だけど、いつもの「いらっしゃい」じゃなくて「おかえり」
胸が、ぽうっと、あたたかくなったのが分かった。
こんなに温かくて気持ちのいい「おかえり」があったんだ。
何も求めない、「おかえり」
ほおに涙が次々つたう
あまりにも感情的な涙で止め方もわからない私は必死に拭った
スンチョルさんがどんな顔でガキくさく泣きじゃくる私を見ていたのか、
そんな反応も見る余裕がなかった
でも、自分の手で塞がれた視界で表情はわからなくても
頭に置かれた優しくてちょっぴり重たい手のひらから伝わってきた
「頑張りすぎなんだよなあ、今の若い奴は…、Aちゃんも、あいつも」
「…、」
「スニョンもなんだ」
「…スニョンくんが、」
「そう。あいつ、俺にすら本当には甘えてこないんだよ」
「…」
「似てるんだよな、多分」
「わたしとスニョンくんが？」
「そう。逃げ場のないところで生きてるだろ？」
「…、逃げ場、ですか。でも、わたしは、最近、できた気がします…」
頭に思い浮かぶ、ミンギュくんやスンチョルさんとの楽しい時間。
そして何より、スニョンくんとの時間。
全部わたしにくれたのはスニョンくん。
「…あいつは無いんだ。未だに」
「でもスニョンくんには学校の友達も、ここもある」
「悲しいことに、あいつにとってはどこも逃げ場じゃ無いんだ。」
「…」
「ごめんな、こんな話して」
黙り込むわたしに困り顔のスンチョルさんが心配そうに覗き込む
「いえ、」
「…、何か飲む？」
「あ、あの、今日、スニョンくん来ますか。」
「…6時から来るよ」
「…それまで、奥の席にいます。スニョンくん来たら、メロンソーダ、お願いします」
「おう。あいつに持って行かせるよ」
スンチョルさんと話しながら待ってもよかった
でもこの時のわたしは、スニョンくんへの言葉を整理する時間が必要だった
※
楽しそうな笑い声、
こそこそ話す女の子たちの声、
お店の音は変化し続ける
お客さんが帰って、違うお客さんが来る。
なのにわたしのテーブルには何も無いまま。
メロンソーダは届かなかった。
※
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ぴょん(プロフ) - 短編集からきました！まだ途中までしか読んでないですけど、良すぎて読み切ったら終わっちゃうのが悲しいです、私水名さんの作品めっちゃ好きです、素敵な作品を残してくださってありがとうございます！！作品の途中なのに伝えたくなるくらい気持ちが先走りました😭 (2022年11月17日 2時) (
レス) @page45 id: 0051795449 (このIDを非表示/違反報告)
水名(プロフ) - ピョナさん» ピョナさん 凄くコメントに助けられました。ありがとうございます。ようやく完結できました。 (2022年2月20日 3時) (レス) id: 539b1ce7fb (このIDを非表示/違反報告)
水名(プロフ) - caraさん» caraさん ありがとうござます。また見ていただくチャンスがあればと願っています。 (2022年2月20日 3時) (レス) id: 539b1ce7fb (このIDを非表示/違反報告)
水名(プロフ) - テイさん» テイさん 嬉しいコメントありがとうございます、すぐに完結させられずすみませんでした。また機会があったら見て欲しいです。 (2022年2月20日 3時) (レス) id: 539b1ce7fb (このIDを非表示/違反報告)
水名(プロフ) - キヌさん» キヌさん ありがとうございます。コメントを見てなんとか完結させる気を起こしました、笑 (2022年2月20日 3時) (レス) id: 539b1ce7fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミナ
| 作成日時：2016年2月22日 16時
