忘れられない少女の話【鬼滅の刃】

8.猫被り ページ9

「時透さん、どうしたんですか。さっきからずっと真顔ですけど」



御館様の屋敷へ出向いて時透さんのお迎えに行ったのだが、さっきからずっと真顔だ

私が蜜璃様と話してる時は驚いた目してたが、柱補佐を務めることになったと言う話題が出たときにはもう既に真顔になっていた気がする



「…知らない」

「私が柱補佐することになった事ですか？言ってないですからね」



柱補佐になる事は、階級が甲になった時から決まっていた

その為本日柱になった時透さん以外の柱からしたら周知の事実なのだ



「煉獄様が“A少女は柱補佐だったな！これからよろしく頼む！”って言った時の時透さんの真顔、面白かったですよ」



すんって真顔になるんですもん、愉快でしたね


口に手を添えながら笑うと、時透さんがチラッとこちらを見た

すると突然眉間に皺を寄せた



「煩い、猫被り」

「ねこっ…！？」



突然、時透さんの私に対する評価が煩い奴から猫被りとなったことに驚きが隠せない

歩みを早める時透さんについて行くべく、私は小走りになる



「猫被りなんかじゃありませんよ」

「嘘」

「本当です！」

「僕か柱の人達に猫被ってる」

「あれは違いますよ、あれは…」



咄嗟に口を噤んだ

立ち止まって黙り込む私に、時透さんは歩みを止める



「と、時透さんと居るのは楽だから…おとなしくないだけです！」

「…何言ってんの」

「うぐっ」



結構今の言葉、傷付いた

勇気を出して言ったのに、普通に蹴られたし…



「時透さんと居ると、私って必要とされてるなぁ…みたいな」

「僕より弱いのに、必要って…」

「弱いとか強いとかの話じゃないですから！」

「じゃあ何の話？」

「え…」



…どうしよう、言ったら気持ち悪がるかな

初めて会った時に言った言葉とか覚えてないよね、多分

１ヶ月間隠し通して来たけど一緒に居るなら言ったほうが…


数分の沈黙の後、意を決して時透さんに向かい合う



「…ほら、時透さんは忘れちゃうじゃないですか。覚えておかないとって感じる事も」



前にも、お昼ご飯食べたのに“食べたっけ”とか、一緒に鍛錬して休憩してたら急に“日向ぼっこする暇があるなら鍛錬したら”とか

今日の柱合会議だって、確かに前日連絡じゃなくて３日前連絡なのが悪いけど、すっかり忘れて鍛錬してたし…



「…もしかして馬鹿にしてる？」

「馬鹿にしてないって分かってて言ってますよね！？」

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